華麗なるギャツビー

華麗なるギャツビー “The Great Gatsby”

監督:バズ・ラーマン

出演:レオナルド・ディカプリオ、キャリー・マリガン、トビー・マグワイア、
   ジョエル・エドガートン、アイラ・フィッシャー、エリザベス・デビッキ、
   ジェイソン・クラーク、アミターブ・バッチャン、アデレイド・クレメンス、
   マックス・カレン、カラン・マッコーリフ、ケイト・マルヴァニー

評価:★★




 ベースにあるのはF・スコット・フィッツジェラルドによる同タイトルの小説『華麗なるギャツビー』だから、もちろん衣装や美術が見所になる。舞台は1922年のロングアイランド。夜な夜な開かれる、ほとんど城と呼んで差し支えないジェイ・ギャツビー宅の狂乱のパーティを中心に、当時のファッションやインテリア、建築物が己を主張する。黄色の高級車。専用ビーチ。巨大プール。吹き抜けの舞踏会場。様々な色が咲き乱れ、アルコールが落とされ、ラメが飛び散り、人々は踊り狂い、そして何故か流れる音楽はヒップホップ。いかにもバズ・ラーマンらしい。

 とりわけキャリー・マリガン、エリザベス・デビッキら女優陣のフラッパーガール風の佇まいが良い。サイドをカールさせたお馴染みの髪型とヘアバンドの合わせ方に技あり一本。女たちのカクテルドレスやイヴニングドレスはミュウ・ミュウやプラダ、男たちのファッションはブルックス・ブラザーズが手掛けているという。ジュエリーやインテリア・小物がティファニーで統一されているのも抜かりなし。

 物語を少しでも知っている者ならば当然、こうした豪華絢爛な空間を創り上げ、なおかつ見せつけ、さらには観る者を強引に引き寄せた後、その裏側の空虚さを浮かび上がらせる必要性に気づかないわけがない。なのにそれに無視を決め込むのがラーマンのラーマンたるところ。派手さ命。目立った者勝ち。突き抜けることこそ重要。斯くして映し出されるのは、MUSIC VIDEOやファッション誌のグラビアを連想させる平面的な世界。そしてそこから広がりを見せることがない。

 しかもラーマンはここに、あろうことか「ムーラン・ルージュ」(01年)で反省したはずの編集技を持ち込む。まるで神経症のように落ち着かないカット割りを畳み掛け、画面をズタズタに引き裂いていく。登場人物が発する言葉のイチイチに反応し、カットが切り替わり、構図が変化し、画面が様変わりし、しかし後には映像の残骸しか残らない。映画において編集というものがどれだけ大切なものか、改めて思い知る。今ハリウッドではラーマンとガイ・リッチーが過剰な編集に溺れるツートップだ。

 ラーマンが興味を示すのが映像ばかりなのは想像がついたことだけれど、ギャツビーの人物像が撫でるだけなのは、いかにも物足りない。謎めいた過去。デイジーとの関係。金の出所。その目的。ギャツビー自身のミステリアスな人物像こそが話を引っ張る吸引力となるはずなのに、肝心なところはナレーションで済まされたり盛り上げをあっさり拒否して語られる。おかげで話が転がれば転がるほど、特に感じ入るところのないメロドラマに堕ちていく。と言うかギャツビー、なんと幼い思考回路。

 ただ、この映画、配役はほぼパーフェクトと言って良いだろう。ミスキャストかと思われたマリガンが20年代にしっかり溶け込んでいるし、トビー・マグワイアは語り部として出過ぎず霞まず器用なところを見せる。ジョエル・エドガートンが体現する傲慢さも破壊力がある(本当にこの役をベン・アフレックにやらせるつもりだったのか?とんでもない配役ミスになるところだ。いや、エドガートンにももう少し華が欲しいのだけれど…)。そして何と言っても、ギャツビーを演じるレオナルド・ディカプリオが素晴らしい。

 振り返ると、ディカプリオが己の「美」を活かした作品というのは、少年性を存分に引き出した「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(02年)以来ではないか。美青年というイメージはほとんどないものの、凡人とは明らかに異なる所作や表情の柔軟さが「美」と密着したとき、それが大変な説得力を持つことは「ロミオ&ジュリエット」(96年)や「タイタニック」(97年)、「仮面の男」(98年)といった作品でも明らか。久々に肩の力を抜いて演技しているのが印象的だ。焦らしに焦らされた後、遂にギャツビーが振り返る場面に笑う。ほとんどギャグ。でも魅せる。後ろでは豪快に打ち上げ花火が上がる。

 ギャツビー=ディカプリオとトム・ブキャナン=エドガートンが激突する場面はいちばんの見せ場になるだろう。力のある役者同士がぶつかる度に、空気が揺れるのが分かる。身を乗り出しながら、あぁしかし、ラーマンよ、どうかこれ以上映像を切り刻まないでと祈っている自分にも気づいてしまう。監督が落ち着きのある人だったら、多少は話に入り込めたかもしれない。





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