イノセント・ガーデン

イノセント・ガーデン “Stoker”

監督:パク・チャヌク

出演:ミア・ワシコウスカ、マシュー・グード、ニコール・キッドマン、
   ダーモット・マルロニー、ジャッキー・ウィーヴァー、
   フィリス・サマーヴィル、オールデン・エアエンライク、
   ルーカス・ティル、ラルフ・ブラウン

評価:★★★




 『イノセント・ガーデン』で初めて思ったのだけれど、ミア・ワシコウスカの地味な個性、つきまとうほの暗さは、ジェニファー・ジェイソン・リーに通じるものがある。ブロンドや赤毛ではなく、限りなく黒に近いブラウンの髪をセンター分けしたワシコウスカは、まるでチョウになる前のイモムシのようだ。ジトッと湿り気のある空気に包まれながら、土を這っているような…。でも、そんな自分を客観的に見つめてもいる。賢さは隠せない。

 ワシコウスカ演じる少女は、18歳の誕生日に父親を交通事故で亡くす。残された彼女と母親の前に所在不明だった叔父が突然現れ、それをきっかけに怪事件が続発する。…という話はさほど吸引力を持っていない。そのまんまと言うか、予測通りと言うか、火曜サスペンス劇場風と言うか…。捻られているようで、捻られていない。

 けれどそれでも面白いのはまず、事件を取り巻く細部描写が優れているからだ。舞台となる屋敷の外観。シンプルな美しさの映える内装。それを彩る趣味の良い家具。刺激的なアクセントを投下する雑貨。完璧な調和を見せる舞台が入念に観察され、完璧であるがゆえに漂い始める不穏な空気が見逃されない。カメラはその歪みを的確に捉える。不安を煽る構図の数々が効果的だ。妖気が画面に溢れ出ている。

 編集の技が光る。複数の場所で起こる出来事を交互に映し出したり、時間軸を自在に行き来したり、編集を駆使して盛り上げる場面が多い。屋敷を出た大叔母がモーテルで危機に直面する場面。少女と同級生が夜の森で事件に遭う場面。少女が誕生日プレゼントを渡される場面。サスペンスと謎解きが交錯し、どこに着地するのか分からない不安を煽る。展開は読めても、エピソードの着地点は見え難いのだ。

 パク・チャヌクは少女に訪れる危機と同時に、その変貌を描き出す。それこそこの映画は、イモムシがチョウになる僅かな瞬間を捉えたものと言って良い。叔父の登場が彼女の中に眠っていた何かを呼び起こす。それは官能への目覚めであり、暴力への目覚めだ。今こそ大人になろうというとき、彼女はアイデンティティーの問題に直面する。

 しかし、ここが面白いのだけれど、彼女はそれを宿命として受け入れているわけではない。自らの人生を選び取っている。宿命として流されようというときに、必死に自らを覚醒させると言うか。ここで効いてくるのが、全編に渡って散りばめられた伏線だ。自然にも奇怪にも映っていた様々な所作や言動は、少女の劇的な変化の兆しだった。気がつけばワシコウスカは、淫らで危うい佇まいだ。決定的だったのはサドルシューズからハイヒールに履き替えたことだろう。

 叔父を演じるマシュー・グードは、一見清潔な容姿ながら、その目の奥ががらんどうな感じが良く出ている。母を演じるニコール・キッドマンの、娘とは対極的な人工的な美も見ものだ。ただし、ワシコウスカを含めた三角関係はもっとかき回しても良かった。特に母娘の複雑な関係は、更なる描き込みにより、事件の表情を奥深いものにする燃料になったはずだ。





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