マニアック

マニアック “Maniac”

監督:フランク・カルフン

出演:イライジャ・ウッド、ノラ・アルネゼデール、
   ジュヌヴィエーヴ・アレクサンドラ、リアーヌ・バラバン、
   アメリカ・オリーヴォ、サミ・ロティビ、モルガンヌ・スランプ、
   サル・ランディ、ジャン・ブロバーグ

評価:★★




 子役の頃のイライジャ・ウッドは可愛らしかった。陶器のような肌。さらさらでくるくるの髪。真っ青な目。命を与えられた人形の容姿により、子役俳優界をマコーレー・カルキンと共に引っ張った。汚れを知らない魂が人間の姿を借りるとこうなるのだと納得した。そのウッドが、『マニアック』では殺人鬼を演じる。

 ウッド演じる男は、そんな職業があったのか、マネキンの修復家だ。夜な夜な街に出かけては好みの女に目をつけ、殺害を繰り返す。そして遺体から髪の毛を剥ぎ取る。本物のウィッグは部屋中に並べられたマネキンに被せられる。男はマネキンに語り掛ける。…とまあ、大変な精神の病みようで、ウッドの虫を殺すことさえなさそうな空気感が、変態性と奇跡的な合致を見せる。ハマっているのだ。

ただし、ウッドの姿はほとんど映らない。基本的に男の視線で物語が進められるため、ウッドが映し出されるのは鏡に映る場面と幻想場面だけになる。5分あるかないかぐらいではないか。けれど、少しの間だけでもゾッとする。もちろんウッドも歳をとるから、三十路らしい変化は見られる。無精ヒゲが生え、おでこにはしわが入り、M字ハゲも進行中のようだ。身体つきはオッサンぽい。人形が無理に時を刻んだような…。その容貌の変化はしかし、大人になることに失敗した者の哀れを見せるのに最適だ。

 主人公の視線を大切にした撮影法は、おそらく男の闇を観客に体験させたいということなのだろう。その意図するところは理解できるものの、彼が変態殺人鬼と化してしまった理由は、退屈に処理されている。「サイコ」(60年)に倣ったかのように「母親」を言い訳にする。フラッシュバックで語られる過去からは、案外磁力が感じられない。

 そして安易な理由づけがすることと言ったら、残酷性の強調となる。作り手が最も張り切って演出しているのが殺し場面にあることは明白で、レイティングを恐れない姿勢は買うものの、結局現実社会では法律が許さないことを映画を利用してやっているだけではないかと不快になる。喉を一刺し、身体を滅多刺し、湯舟に沈め、ナイフで口を真っ二つ。髪の毛を剥ぐ場面では、刃物が入るときの音を丹念に切り取ることを忘れない。

 最初から男が狂っているのもどうか。女を品定めするときの息の荒さ。それに気づいて逃げる女たちを追い掛ける執拗さ。用意周到に罠にかけていく計算高さ。変態がいきなり露になり、多角的な見方を拒否する。彼の殺人欲が性欲と密着していたり、ゲイ的要素が仄めかされたり、映画的に掘り下げられる要素はあるのに勿体無い。大変愛らしいノラ・アルネゼデールに生き延びて欲しいと思わせるだけの映画へと堕ちていく。





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