オブリビオン

オブリビオン “Oblivion”

監督:ジョセフ・コシンスキー

出演:トム・クルーズ、モーガン・フリーマン、オルガ・キュリレンコ、
   アンドレア・ライズボロー、ニコライ・コスター=ワルドー、
   メリッサ・レオ、ゾーイ・ベル

評価:★★★




 『オブリビオン』はまず、SF映画らしくヴィジュアルで勝負に出る。爆発したまま空に浮かぶ月。高度3,600メートルの地点にそびえ立つ基地。最先端のテクノロジー。球体のコックピットを備えた戦闘機。生物のように動き回る無人飛行機。宇宙からの侵略を受け、地球人が土星の月に移り住んだ2077年。SFではお馴染みの荒れ果てた地球を登場させ、しかし新鮮味を失うことなく映し出すこと。ジョセフ・コシンスキー監督はその重要性に気づいている。

 画面が全体的に白っぽいのが印象的だ。生命体反応がほとんどない地球は、余計な装飾が全くない。荒涼たる大地や何もない砂漠も白い。色すらも無駄なのかもしれない。奇妙に美しくも違和感を感じる色合いが胸をざわつかせる。空の青や僅かに残された緑がそれゆえ、鮮烈に映る。

 美術を中心にした創り込みが冴えているのに、アクション場面はつまらない。空中アクションは戦闘機から発射されるレーザー光線の応酬で、TVゲームでも見せられているみたい。「スター・ウォーズ」(77年)の病とも言う。地球の監視員である主人公が手にする武器も銃口がライトになったマシンガンぐらいだし、メカとの闘いを強いられるゆえ肉体と肉体がぶつからないもどかしさがある。

 話には捻りが加えられる。中盤、エイリアンにまつわる真実が明かされる件から、物語の表情がどんどん変わる。謎解きが重要な意味合いを持ち、知らず知らずのうちに心に引っ掛かっていた違和感の正体が見えてくるのはなかなか面白い。ただ、案外独創性には乏しい。最も重要などんでん返しは主人公のアイデンティティーにあるけれど、これが某インディーズ映画(09年)のオチにもあったように、昨今増えている仕掛けでしかない。これに驚くことができないと、拍子抜けの感は否めない。

 尤も、コシンスキーの興味は謎解きよりも、真相に密着したラヴストーリーにあるのだろう。空から降ってきた宇宙船に乗っていた謎の美女と主人公の関係は、たとえ見え見えでも見入るものがある。トム・クルーズとオルガ・キュリレンコ、美男美女同士、目に優しい。クルーズが置かれた状況を考えると、切なさもより増していく。クルーズの生真面目さが活きている。

 ヒロインはキュリレンコだけれど、もっと複雑なキャラクターを演じるのはクルーズの同僚であるアンドレア・ライズボローだ。クルーズを見つめる眼差しにどんどん翳りが差していく。ライズボローの演技が情感をもたらす。おたふく顔なのに。過去が明らかになったとき、「チーム」という言葉が急激にせり上がる。三角関係の映画と見ることも可能だろう。

 それにしてもクルーズには大作が似合う。決して大柄ではないのにスケール感たっぷり。「ずんぐりむっくり」を「筋肉質」に見せながら、漫画みたいに星が入った目を輝かせながら過酷な状況に立ち向かう。これぞスターだと思ったのは、自らの正体に気づく際の対決場面だ。可笑しい。無茶苦茶可笑しい画だ。ブラッド・ピットやジョニー・デップが同じことをしても、こんなに可笑しくならない。当然のことながら、クライマックスではさらなる混沌を期待するのだけれど、それがどこにも見当たらない。コシンスキーよ、ここで節度を守ってどうする。笑いを爆発させながらクルーズを大暴れさせる、絶好の機会ではないか。お行儀良いまとめ方に落胆する。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ