グランド・マスター

グランド・マスター “The Grandmaster”

監督:ウォン・カーワイ

出演:トニー・レオン、チャン・ツィイー、チャン・チェン、
   マックス・チャン、ワン・チンシアン、ソン・ヘギョ、
   チャオ・ベンシャン、シャオ・シェンヤン、
   ユエン・ウーピン、ラウ・カーヨン、チョン・チーラム、カン・リー

評価:★★★




 アジアの才能は武術(カンフー)映画を撮らなければならないという掟でもあるのだろうか。アン・リーも、チャン・イーモウも、チェン・カイコーも武術映画を撮り上げた。いずれもワイヤーアクションにポイントを置いた武術シーンの映像美で魅了する。ブルース・リーの師であるイップ・マンの知られざる実話を基にした『グランド・マスター』で、ウォン・カーワイは彼らに近づくことができるだろうか。

 相変わらず、この監督は話にはさほど興味を示さない。1930年代から50年代にかけての中国で、武術界の頂点に立つのは一体誰か…という一本軸はあるものの、勝負を賭けるのはやはり、ヴィジュアルだ。話の筋を追うことに懸命になり過ぎると、手応えは得られないだろう(流派が整理できていないし、話と話を繋げる接着力が弱い)。彼は脚本らしい脚本を用意しないことで知られている。良くも悪くもウォン・カーワイ映画だ。

 けれど、さすがに画面は面白い。武術映画にしては珍しくワイヤーアクションは控え目。スローモーションや早回し、カット割りの妙、視覚効果による背景の描き込みに力を注ぎ込み、破壊力のある美を追求している。地面に落ちる雨は一粒一粒が銃弾のように打ちつけ、雪は桜が舞うように降りしきる。壁は吹っ飛び、押し車はぺちゃんこになり、ネオンや列車、階段があまりにも優雅な装飾となる。

 最初、アクション以外でも(さり気なくではあるものの)この演出法が採られているのに呆れたのだけど(MUSIC VIDEOみたいではないか)、次第に中毒性が出てくる。ほとんど偏執的なこだわりが、個性を生み出している。歪な話の中で、真っ直ぐな輝きを放ち始める。

 それに役者の顔に魅せられる。歳を重ねて枯れた味の出てきたトニー・レオンは動きが柔らかいのが気持ち良い。不老不死的美を見せるチャン・ツィイーは雪の花の化身のように冷たくしなやかだ。チャン・チェンは重みと鋭さを湛えたアクションで画面を切り裂く。彼らはブルース・リーやジェット・リーのように武術のマスターではないけれど、身体全体から滲み出る情感がウォン・カーワイ流のアクションと見事に共鳴する。この映画で最も褒められるべきところだ。

 情感はそのまま武術のあり方へと繋がっていく。カンフーとは横か縦か。負けた者は横たわり、勝った者は立つ。シンプルな答えがそのまま、それを披露する者の人生に重なっていく。レオン演じるイップ・マンとワン・チンシアン演じるゴン・パオセン対決が「思想」により決着を見る件、奇妙に心に残る。





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