ヒステリア

ヒステリア “Hysteria”

監督:ターニャ・ウェクスラー

出演:ヒュー・ダンシー、マギー・ギレンホール、ジョナサン・プライス、
   フェリシティ・ジョーンズ、ルパート・エヴェレット、シェリダン・スミス、
   アシュリー・ジェンセン、ジェマ・ジョーンズ

評価:★★




 どんなものにも始まりというものがある。当たり前のように使っている道具でも、それを発明した人がいて、広めた人がいて、受け入れた人がいる。現代社会、ただの一度もお世話になったことのない人は僅かだと思われる「電動式マッサージ器」も例外ではない。堅苦しいか。はっきり書くと「ヴァイブレーター」、大人のおもちゃのことだ。

 『ヒステリア』は1,880年英国を舞台に、その誕生秘話を取り上げた喜劇だ。こんなに面白そうな題材を持ちながら、しかしその煮込みは半端に済まされる。道具が出来上がる件はあっさり処理されてしまうし、途中から「女性の権利」「女性の解放」を掲げた話に移行するのも全く説得力に欠ける(それまで女性の性欲はどう処理されていたと考えているのか)。ロマンティック・コメディ要素が組み込まれるのも、あまりに強引だ。

 けれど、愛敬は具えている。くりくりオメメのヒュー・ダンシー演じる青年医師は、大真面目な顔をして「治療」を施す。ヒステリーという名の病気だと診断された女たちの、身も蓋もない言い方を選ぶなら、女性器のマッサージがそれだ。女たちは若いのも老いたのも、恍惚の表情を浮かべる。そして喘ぐ。悦びに耽る。クソマジメなダンシーは、決してそれに動じない。欲情一切なし。照れもなし。ホントかよ!直接触れているのに?!真面目に取り組み過ぎて、黄金の右手が腱鞘炎になってしまうのが可笑しくて可笑しくて…。

 ここで重要なのは、下ネタで笑わせようという気配を排除しているところだ。題材が題材だけに、いくらでもバカ方向に走れそうなものだというのに、いたって真剣に話に向き合う。性を笑い飛ばして(バカに繋げて)持たせようという卑しさを感じさせない。「ユーモアとペニスで女は満足する」なんてセリフが出てきても、ハートで勝負する。おそらくこんなことは言われたくないだろうけれど、いかにも女性監督らしい。思いがけず、それがバランスの良い画を生み出す。

 ダンシーのお堅い立ち振る舞いや上流社会のお行儀良さに蹴りを入れるマギー・ギレンホールが好調をキープ。福祉施設の運営に全力を注ぐという設定こそ気恥ずかしいものの(だから心優しいって?)、当時にしては進歩的な物の考え方に、気持ち良くフィットしている。妹役のフェリシティ・ジョーンズとの対比も冴えているし、小動物を思わせるダンシーとの掛け合いにも王道ロマコメの楽しさを忍ばせている。

 ルパート・エヴェレットの登場も愉快なアクセントだ。お直しの成果により、やたら目がぱっちりしているエヴェレットが、ダンシーの大金持ちの友人役として笑いを次々投下する。やや都合の良い扱われ方に思えるところもあるけれど、その軽妙さはさすがだ。

 映画に限ったことではない。愛敬というのは計算して浮上するものではない。その人物の物事への対処の仕方の中に、ふと見える愛らしいえくぼ。このヘタクソな映画には、それがある。命になっている。簡単に拒否するのは勿体無い。むしろこっそり愛でたい気分にさせる。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ