ジャッキー・コーガン

ジャッキー・コーガン “Killing Them Softly”

監督:アンドリュー・ドミニク

出演:ブラッド・ピット、スクート・マクネイリー、ベン・メンデルソーン、
   リチャード・ジェンキンス、ジェームズ・ガンドルフィーニ、
   レイ・リオッタ、サム・シェパード、ヴィンセント・カラトーラ

評価:★★★




 裏社会、ある組織の賭場がストッキングを被った二人組の男に襲われる。かつてそこでは雇われ支配人が狂言強盗を働いたことがあり、今度もまた、彼の仕業に仕向けようという二人組の思惑が働いている。襲撃は成功する。組織が動く。凄腕の殺し屋ジャッキー・コーガンが雇われる。真相が静かに探られる。

 …という出足の部分だけで、クールな犯罪スリラーを想像する。それに見合った画面が出てきて興奮する。アンドリュー・ドミニク監督ならではの美意識が煌く。冷静なカメラワークや光や闇の切り取りが冴える。殺しの場面には特に力が入られる。スローモーション。生き物のように映る雨や血。聴覚を刺激する音響。殺し屋を演じるのが顔に疲れが出てきたブラッド・ピットで、肩の力の抜け具合が悪くない。

 けれど、『ジャッキー・コーガン』の真の面白さは別のところにある。ポイントになるのは、2008年という背景だ。ウォール街から始まった経済危機が深刻な影を落とし、アメリカ中が大統領選挙に沸いているとき。庶民の暮らしは打撃を受け、心は弱くなり、希望を見つけようと誰もがもがいている。そしてそれは、裏社会もまた例外ではないということが大いに意識されていて、その空気感は犯罪スリラーというよりむしろ、ブラック・コメディと呼ぶに相応しい。

 裏社会の大物であれ、チンピラであれ、殺し屋であれ、その立場なりのダメージを受けている。悪党どもの会話や関係からは、責任問題だとか世間体だとか離婚問題だとか、やけに人間臭い言葉が浮上する。効率性が重視され、値切り交渉が行われ、できることならチップは払いたくない。組織も世間一般と変わらない。悪党たちのため息ばかりが聞こえてくるのが可笑しい。

 おそらく意図的な起用だろう。レイ・リオッタが賭場の支配人役で情けなさを全開させる。リオッタと言えば、そのざらついた肌の質感と狂気の眼差しにより、ギャング映画で重宝されてきた俳優だ。それがここでは、敵対にする人間を脅すのではなく脅される側に回っている。それどころかぼこぼこに殴られる、蹴られる、銃弾を打ち込まれる。顔面にパンチを受けて血だらけになるときのリオッタが衝撃的だ。泣いちゃうのだ。栄枯盛衰。堕ちた者への残酷な仕打ちが妙に胸に来る。この映画で最も印象に残るのはリオッタともうひとり、襲撃犯を演じるスクート・マクネイリーの泣き顔だ。悪党だって辛ければ泣いちゃうのが、今という時代だ。えーん…。

 そんなわけで、シンプルな犯罪スリラーの骨格を持ちながら、物語が進むにつれてアメリカという国が立ち上がってくる構成がスマートだ。ジャッキー・コーガンが「アメリカは国ではない。ビジネスだ(America is not a country it's a business.)」と言い放つラストに向けて、いかにそれを肌で感じさせるか、ドミニクの試みは概ね成功していると言えるだろう。達観したようなジャッキー・コーガンもまた、アメリカの一部でしかない。

 セリフの捻り具合にややスカシが感じられるところは少々気恥ずかしい。間の持たせ方も含めて、クエンティン・タランティーノ映画のイミテーションに見えるところもちらほらある。今となっては虚しさを感じさせるバラク・オバマの就任当初の資料映像が、サブリミナル的に流され続けるのも煩いところだ。





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