ルビー・スパークス

ルビー・スパークス “Ruby Sparks”

監督:ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス

出演:ポール・ダノ、ゾーイ・カザン、アネット・ベニング、
   アントニオ・バンデラス、スティーヴ・クーガン、エリオット・グールド、
   クリス・メッシーナ、アーシフ・マンドヴィ、トニ・トラックス

評価:★★★




 スランプ中の若い作家が創造した小説のヒロインが、現実の世界に現れて作家と恋に落ちる。モテない男子の妄想のような設定。作家を演じるのが、オタク的容姿をしたポール・ダノだからホッとする。まんまるの顔。のび太風メガネ。ひょろひょろの身体と長い手足。おどおどした振る舞い。恋愛偏差値は間違いなく低そうなダノだから、男にとって都合の良い展開でも寛容な気分で見ていられる。イタイと言うか、怖いと言うか、身近にいそうな人物像。

 けれどやっぱり、『ルビー・スパークス』のポイントとなるのは、理想の女の子として登場するタイトルロールを演じる女優だろう。脚本も手掛けたというゾーイ・カザン(なんとエリア・カザンの孫娘だ)は「中の上」ぐらいの容姿で、安心感を抱かせてくれるのがイイ。茶色の髪。ブルーの目。人懐っこい笑顔。肌は適度に露出気味。ご近所で住んでいそうな、ちょっと頑張れば手が届きそうな、男を顔だけで判断するようなことのなさそうな、案外貴重な親しみやすさだ。

 作家の妄想は暴走気味だけれど、これがなかなか男心を突いたもので苦笑い。初めて家に現れるとき、自分のシャツをパジャマ代わりに着て(もちろん彼女が着るとだぼだぼ)、起きてきたばかりの自分を迎えるなんていうベタなシチュエーションが可笑しい。チェリーピンクやコバルトブルー、ロイヤルブルーといったヴィヴィッドカラーの洋服で着せ替えごっこ。性格も良くて、甘え上手。作家は当然のようにお調子こいて、彼女を自分好みに書き換えていく。男って、男って…。

 笑いながらも次第に自慰行為的に見えてくるのは辛いところ。結局男が女を自分が気持ち良くなれるように動かしているに過ぎない。女による脚本なのにおかしな話だという匂いが漂い始めたところで、案の定、女の逆襲が始まる。ルビーが作家の器の中から飛び出して、自由を求め始める。女は男の思い通りになんてならない。シビアな現実を突きつけられて、作家がアタフタする。ダノの困惑顔が可笑しい。

 理想だけで成り立った恋愛のどこが面白いのだろうという開放的な価値観が浮上する。作家はルビーをコントロールし、けれど自分が思い描いたように彼女を動かすことで、かえって溝を作ることになる。男と女の違い。理想と現実の違い。生きる時間の違い。理想だらけの世界など、味気ないのではないかという見方に共感する。作家とルビーがこれをどう突破していくか、そのあたりはもっと練り上げて欲しかった。

 ルビーが真実を知る件は、作家がマッドサイエンティストのように見えるのが落ち着かない気分(多分狙っている)。ルビーが自分の思うように行動しようとすると、作家がそれを書き換えてしまう。心の問題ではなく小説と女を結びつけるからくりの問題にしか見えないのは、マイナスだろう。

 ルビーとのシニカルな結末はいかにも女が書いた物語だ。けれど、その後にもう一捻りあるのは、カザンの優しさの表れでもあるだろう。都合良くても気分が良い。映画史へのウインクやアネット・ベニング、アントニオ・バンデラスといった大御所の役不足など課題も多いものの、なかなか面白い逸材。ゾーイ・カザン、覚えておいて損はないと思う。





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