カルテット! 人生のオペラハウス

カルテット! 人生のオペラハウス “Quartet”

監督:ダスティン・ホフマン

出演:マギー・スミス、トム・コートネイ、ポーリーン・コリンズ、
   ビリー・コノリー、マイケル・ガンボン

評価:★★




 どうやらその老人ホームは街中から離れた田園地帯にあるらしい。自然がたっぷり残る静かな環境の中、ホームは凛とした雰囲気を守って建っている。品の良いカーテンを通して届く、優しい陽射し。曲線豊かな建築構造に、丸味を帯びたテーブルや椅子。ふかふかのソファやベッド。主張し過ぎない鏡や絵画、スタンドライト。壁紙は淡い色で、インテリアの多くは落ち着いた茶色になっている。スタッフは皆親切で、そこに住む者たちは自由気ままにやりたいことをしている。あぁ、なんと心地良い空間。そして思うのは…。

 思うのは一体全体、いくら払えば入居できるのだろうという身も蓋もない疑問だ。けれど、そんなことを言ったら、ダスティン・ホフマン監督は哀しむだろう。泣いちゃうかもしれない。ホフマンが目指したのは、世間の中心から遠くに離れて生きる老人たちに光を当て、その逞しい佇まいを讃えることなのだから。ホフマンの登場人物たちへの視線に嫌味はない。彼らへの敬意こそ命、みたいな。

 『カルテット! 人生のオペラハウス』は、その強調が過ぎるのが問題だ。人は誰しも老いる。若い頃できたことができなくなっていく。認めた上で、それらを笑い飛ばし、人生賛歌に繋げている。よって、身体にはっきりと現れた老化現象が物語の至るところに散りばめられる。白髪やしわ、曲がった腰、物忘れの激しい頭…。エピソードはそれらを大々的に絡めたものが並び、けれど暗くなることはなく、それどころか明るい笑いを弾けさせる。その繰り返しでは煩く感じられても仕方がない。

 老人ホームの存続を賭けたオペラ公演の開催を目指す…という話は重要視されていない。公演が実現しないわけがない。それにホフマンの興味は、物語ではなくカルテットを奏でる主役四人組に向いている。クセの強い人物を用意することで、自動的に物語を転がしている印象すらある。スパイスになるはずの過去のわだかまりも効きが悪い。おかげで余韻と呼べるものはほとんど残らない。観終わった直後から、奇麗さっぱり記憶から消えていく。

 でもまあ、ホフマンのキャラクター重要視のおかげで、俳優たちは楽しそうにしている。トム・コートネイは気品を湛えたままに老け、ビリー・コノリーはスケベオヤジとして遊んでいる。認知症が入ってきた役を演じるポーリーン・コリンズは、無邪気に笑顔を振り撒き、出てくる度に笑いを取る。

 けれどやっぱり、マギー・スミスがいちばんの見ものだ。老い方が潔くてカッコイイ。大きな大きな目は変わらないが、顔はしわくちゃになった。ほうれい線どうこうという話ではなく、目周りも頬も鼻の下もしわだらけ。たるみもたっぷり。どこからどう見てもバアサンなのに、やっぱりタダモノではない。所作が美しく、ピンと伸びた背筋が気持ち良い。早い話、エレガントなのだ。かつてのオペラの大スターという設定が嘘臭くない。口から飛び出る言葉が棘だらけなのも、素晴らしく愉快だ。

 クライマックスは予想通りオペラ公演になる。カルテットが遂に完成する。最後の切り上げが逃げのように感じられたのは残念。俳優たちが実際に歌うにはオペラは難易度が高過ぎるがゆえの選択なのだろうけれど、少々肩透かしだ。





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