コズモポリス

コズモポリス “Cosmopolis”

監督:デヴィッド・クローネンバーグ

出演:ロバート・パティンソン、ジュリエット・ビノシュ、サマンサ・モートン、
   サラ・ガドン、ポール・ジャマッティ、マチュー・アマルリック、
   ジェイ・バルチェル、ケヴィン・デュランド、
   ケイナーン、エミリー・ハンプシャー

評価:★★




 俺は気に入った絵画があれば、美術館ごと買い上げる金を持っている。顔も整っているし、体格も悪くない。目をつけた女も抱き放題だ。つまりこの世は俺のものだ。白いリムジンはもうひとつの家だ。この中から部下を、会社を、世界を操作する。簡単なことだ。なのに、あぁ、何故こんなに虚しいんだ…。

 『コズモポリス』の主人公の心の叫びは…何と言うか、実に分かりやすい。資本主義社会の恩恵を十分過ぎるほどに受けながら、皮肉なことに、だからこそ人生が虚無感に包まれていくという、大変“真っ当”な闇に呑まれていく。満ち足りているのは人生の外観だけ。青年じゃなくても、案外見かける贅沢な苦悩でしかない。

 前半から中盤にかけては、青年の日常と、何故彼は破滅へと至るのか、その気配を探る。デヴィッド・クローネンバーグはいきなり賭けに出る。青年が一日の大半を過ごすリムジン内で会話劇を展開させるのだ。リムジンが表情を次々変えるところが面白い。青年を演じるロバート・パティンソンよりもお喋りで、かつスピード感ある変化を見せる。クローネンバーグもリムジンに熱のこもった装飾を施す。

 青年の客、スタッフ、女、主治医らが入れ代わり立ち代わりリムジンを訪れるのは、屋台に人が集まってくるみたいだ。意地悪く見るなら、電灯に集まる虫に例えることもできる。時に商談の場に、時にデスクに、時にベッドに、時にディナーテーブルに、時にトイレへと機能を変えるところは、ドラえもんの四次元ポケットを思わせる。窓の外の景色は不吉で寂しげだ。それをにこやかに見つめる青年が不気味だ。彼はここでしか生きられない。

 …とふと思わずにはいられない。まるでそこは青年の母の羊水のようではないか。何もかもを極め、成し遂げ、手に入れ、しかし青年はいつしか、胎児へと戻っていく。そして羊水の中に、本当に快適な場所を見つけるのだ。テクノロジーと富の夢想と一緒に浮かんでいる。

 クローネンバーグとしては資本主義社会のがらんどうの内部を告発したいのだろうけれど、説明的になり過ぎた嫌いがある。膨大なセリフには小難しい言葉が並べられ、それが意味するところは理解できても、人間の本能との接着力は頼りない。頭でっかちで退屈に感じられる場面も多い。

 それに結局、パティンソンが足を引っ張る。演技の稚拙さ云々はこの際目を瞑る。ただ、スーツが身体にまるで馴染んでいないのには迷うことなくレッドカードを進呈する。型崩れしないどうこうではなく、スーツが苦しそうな表情を浮かべるのが辛い。グッチという一流ブランドなのに…。おそらくパティンソンはスーツを着る機会が滅多にないのだろう。経験不足が世界観の亀裂を生じさせる。青年とスーツが一体化することなくして、成立しない話だ。

 ポール・ジャマッティが出てきたところで、ようやくホッとする。役柄の正体こそありきたりではあるものの、ジャマッティの柔軟性のある演技が画面をカラフルにする。釣られてパティンソンも、予想外の顔面筋肉を動かす。見え見えの結末でも、物語に一陣の風が吹く。





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