君と歩く世界

君と歩く世界 “De rouille et d'os”

監督:ジャック・オディアール

出演:マリオン・コティヤール、マティアス・スーナールツ、
   アルマン・ヴェルデュール、セリーヌ・サレット、コリンヌ・マシエロ、
   ブーリ・ランネール、ジャン=ミシェル・コレイア

評価:★★★




 女はシャチの調教師だ。自分の身体に自信を持っている。けれどある日事故により、両脚を切断することを余儀なくされる。男は姉夫婦を頼って町に出てきたばかりのシングルファーザー。可愛い息子がいる。しかしその立ち振る舞いは一人前の大人の男とは言い難い。このふたりが出会う。「最強のふたり」(12年)のように快楽的な方向に向かうことも可能な題材ではあるものの、ジャック・オディアールはより現実を掘り下げ、人間の闇の部分を探っていく。

 『君と歩く世界』の最大の魅力は人物造形にある。絶望に打ちのめされ、真っ暗闇から這い上がる女のタフさが頼もしい。男はむしろ欠点が目立つ。喰うために盗みをする。息子に手が出ることもある。言葉遣いは汚い。他人への気遣いはほとんどない。オディアールは人間の「醜」の部分を露にすることを恐れない。

 このふたりが奏でるラヴストーリーだ。一筋縄で行くわけがない。女は自分を娼婦呼ばわりした男を呼び出す。女が男のデリカシーに欠ける言動にかえって惹かれる最初こそ恋愛の基本だけれど、その後は男と女の間に流れて然るべきはずのものがちっとも明確にならない。シリアスな関係ではないと割り切ったふたりの心の揺らぎが面白い。男と女ではなく、人間と人間が引き寄せ合っている感じがよく出ている。

  男の女への態度が可笑しい。無神経だし、身勝手だし、無責任だ。人生に真面目に向き合っているんだかいないんだかよく分からない。本当に大切なものに気づかないふりをしているところもある。女が嫉妬という負の感情を爆発させる件も、元はと言えば、男の自己中心的な言動のせいだ。

 それにも関わらず、一緒にいるときのふたりは輝く。人間というものの魅力は、決して美点から溢れるものではない。欠点を具えているからこそ、人物には奥行きが出る。複雑になる。美点が表情を変える。極めて簡単に、乱暴に言うなら、「人間臭い」から、この男と女が輝いている見えるのに違いない。

 マリオン・コティヤールの迫力もさることながら、マティアス・スーナールツにより感心する。憎まれ役になっておかしくないところなのに、身体の芯に不思議な磁力が宿っていて、コティヤールのみならずどうしても引き寄せられる。中年太りが入りかけた身体がやけに生々しく、謎めいた過去への想像も激しく掻き立てられる。

 後半は男と女が互いの存在の大きさを痛感する場面が多くなる。いずれも胸に残る。とりわけ女が闇の格闘技で身体を張る男を見つめる目には胸を掴まれる。女でなくても目を背けたくなる血みどろの世界。暴力が華となる世界。情けが致命傷となる世界。男はこの世界に賭ける。女は男の覚悟を感じ取り、瞬きすることも惜しんで男を見つめ続ける。車から降り立つ女の姿に震えが来る。





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