ヒッチコック

ヒッチコック “Hitchcock”

監督:サーシャ・ガヴァシ

出演:アンソニー・ホプキンス、ヘレン・ミレン、スカーレット・ヨハンソン、
   ジェームズ・ダーシー、ジェシカ・ビール、ダニー・ヒューストン、
   トニ・コレット、マイケル・スタルバーグ、マイケル・ウィンコット、
   リチャード・ポートナウ、カーウッド・スミス、ラルフ・マッチオ

評価:★★




 まず、アンソニー・ホプキンスがアルフレッド・ヒッチコックに全く見えない。ヒッチコックぐらい有名になると、当然最新の映画術を用いたメイクが施される。それなのに、あぁ、ホプキンスとヒッチコックは似ても似つかない。外見も醸し出す空気感も…。断わるまでもなく後者がより問題だ。最新技術が人間の強力な個性に敗北する瞬間を目撃する。ヒッチコックとは思えない者をヒッチコックだと強引に押しつけられる。別にそっくりメイクでモノマネせよと言っているわけではない。

 『ヒッチコック』は監督の後期映画「サイコ」(60年)の撮影現場を描く。ヒッチコックの代表作であり、ホラーの古典だ。シャワーシーンの残忍な殺戮やラストシーンの衝撃は、未だに語り草だ。誰もが知る名作は、一体全体、どのようにして生まれたのだろうか。

 …という話の軸となるものはしかし、作り手が想像する以上に実はかなり世に知れ渡っているのが辛いところだ。ヒッチコッククラスの巨匠ともなると、その逸話や伝説は数え切れないほどに存在する。「サイコ」だけに限っても膨大だ。物語は「サイコ」撮影現場のトリヴィアを並べているだけに過ぎない。当時のスターや映画。パラマウント・ピクチャーズとの確執。映倫との攻防。ヴェラ・マイルズとの溝。宣伝マニュアルの作成。限がない。

 これではヒッチコック好きは物足りないだろう。「サイコ」を観ていない人ならどうかと僅かに思うものの、作品そのものが「サイコ」を観ている前提なので、その場合はもっとわけが分からないだろう。どう転んでも、エピソード集に終始するこの脚本では勝算は低い。

 中盤以降、ヒッチコックと妻アルマ・レヴィルの夫婦関係に焦点が絞られるのも退屈を誘う。天才の陰には彼を誰よりも理解し献身的に支える良くできた妻がいた、というお決まりのそれが全く意外性なく描写される。アルマの友人を交えた三角関係には陳腐なメロドラマの匂いが漂う。おかげでアルマを演じるヘレン・ミレンは見せ場を貰えたけれど…。

 ヒッチコックを描くのであれば、彼の映画に如実に浮上する変態的要素を探らなければ、話にならない。ブロンド美女へのこだわり。主演女優への執着。死体への偏愛。覗き見的嗜好。…その“趣味”の数々は何に裏打ちされたものだったのか。それを暴かないでどうする。エド・ゲインを担ぎ出して、ヒッチコックの話し相手にさせている場合ではない。

 遂に「サイコ」が劇場公開された際、ヒッチコックがドアの向こうのロビーから客席の反応を見守るクライマックスは、数少ない良い場面だ。シャワー場面のあの音楽が流れ出し、観客が絶叫し(大袈裟な顔ばかりで可笑しい)、ヒッチコックが奇怪に踊り始める。ヒッチコックの変態性が映像になっている。これだ。これこそもっと取り上げるべきものだ。夫婦ドラマにしてしまうだなんて、ヒッチコックも怒っているに違いない。





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