エメランスの扉

エメランスの扉 “The Door”

監督:イシュトヴァーン・サボー

出演:ヘレン・ミレン、マルティナ・ゲデック、カーロイ・エペリエシュ、
   アーギ・スィルテシュ、ガーボル・コンツ

評価:★★




 1960年代ハンガリー、ブタペスト。その家政婦は仕事ができる。料理が上手い。掃除はテキパキこなす。時間も守る。言うことは(大抵)筋が通っている。おそらく傍にいてくれたら、かなり自分の時間を有意義に使えるはずだ。ただ、彼女は過去に何かがあったらしい。隠し事をしているようだ。無愛想で、言葉は辛辣だ。名前はしかし、ミタではない。エメランスと言う。

 『エメランスの扉』はエメランスというキャラクターが全てのような映画だ。風変わりな行動が多く、自分の家に決して人を入れることはない。ピンと伸びた背筋が気持ち良い。歩き方も堂々としている。箒で道端を掃く様すらキマッている。口から飛び出す毒舌も、いっそ痛快だ。

 しかも演じるのがヘレン・ミレンだ。根拠のない言葉でも、ミレンの口から飛び出すと怖ろしく説得力が出る。大型犬をあっさり懐かせてしまうのも可笑しいし、納得できる。「働く相手は私が選ぶわ」なんて生意気なセリフも、あら不思議、別に不快さなんて感じない。むしろ尊い人みたいだ。

 その彼女を小説家をしている若い女が気に入り、家政婦として雇う。女ふたりの交流を描き出す。そこに何かが生まれ出すというのはいかにも映画的な展開だけれど、ミレンが強力なキャラクターを作り出しているのだから、プロット自体はあっさり素直なくらいで丁度良いのかもしれない。

 ただし、話がエメランスの抱えているものを解き明かすこと自体にシフトしていくのは大きな間違いだろう。エメランスは最初から謎めいた存在だ。あからさまに何かを隠している。小説家は当然彼女に興味を持つ。何を隠しているのだろう。その謎が持つ吸引力に頼った展開になるのは、本末転倒ではないか。交流の中に謎が浮上するのではなく、謎を解き明かすために交流がある。落ち着かない気分が拭えないのはそのせいだ。

 エメランスの過去よりも扉の向こうよりも、小説家との関係の方が面白い。エメランスがはっきりきっぱりした女ゆえ、その言葉には嘘偽りのないものが並べられる。当然そこには人が聞きたくないものも存在する。小説家はその言葉に本気で怒る。憎みもする。けれど、どうしても彼女を愛してしまう。そのまた逆もしかり。雇う側と雇われる側でありながら、ここには人間同士の正直で有意義な衝突が存在する。女ならではの同志的結びつきが見える。複雑で頑なで、でも案外頑丈だ。ミレンとマルティナ・ゲデックは確かにそれで繋がっていたと思う。





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