マーサ、あるいはマーシー・メイ

マーサ、あるいはマーシー・メイ “Martha Marcy May Marlene”

監督:ショーン・ダーキン

出演:エリザベス・オルセン、サラ・ポールソン、ジョン・ホークス、
   ヒュー・ダンシー、ブラディ・コーベット、ルイーザ・クラウゼ、
   ジュリア・ガーナー、マリア・ディッツィア、クリストファー・アボット

評価:★★★




 マーサは一見、どこにでもいる若いアメリカ女性だ。2年間の音信不通を経て、姉夫婦が余暇を過ごす別荘にやってくる。姉夫婦はマーサを歓迎する。マーサも笑顔を見せる。穏やかな休暇はしかし、常識から外れたマーサの言動により、静かに崩れ始める。

 実はマーサ、2年間をカルト教団の中で過ごしてきた。信者たちにはマーシー・メイと呼ばれた。『マーサ、あるいはマーシー・メイ』はそこから逃げ出し立ち直ろうとする今のマーサと、カルト教団内での日々を交互に描く。入るのは簡単で、けれど抜け出すのは困難を極めるカルト教団の実態。日常レヴェルでよく聞くことではあるものの、映像としてそれを見せられると、なかなか衝撃的だ。

 面白いのは断然、抜け出してからのマーサだ。意志を持って教団から脱走を決めたことに間違いないものの、世間との溝は簡単には埋められない。突如全裸で湖を泳ぐ。キッチンテーブルに平気で足を投げ出す。食事はほとんどとらない。ファッションや化粧には無頓着。セックス中の部屋に入り込む。じわじわとエスカレートするおかしな言動にギョッとする。

 けれどもっと胸がざわつくのは、何の変哲もない普通の言動に見えたものが、実はカルト教団内での生活に影響を受けたものだと判明する件だ。2年という歳月がマーサの頭の天辺から手足の指先までをカルトに染め上げる。心を支配されてしまった者の苦しみと哀しみは、逆に毛穴から溢れ出る。立派にホラーだ。

 マーサなのか、それともマーシー・メイなのか、曖昧なヒロインに扮したエリザベス・オルセンが、瑞々しい容姿の中に息詰まる苦悩を封じ込めた素晴らしい演技を見せる。鼻の下が長いのはオランウータンを思わせるものの、普通を願いながらも叶わない難しさを、身体全体に表情をつけて伝える演技だ。セリフがある場面よりも無言を貫く場面が良い。肉体と精神が共鳴しない危うさがよく出ている。

 カルト教団での生活描写は、ひょっとすると突込みが過ぎるかもしれない。オルセンの佇まいが雄弁にカルトの実態を悟らせるのだから、もっと内部を曖昧にして、その得体の知れなさを浮上させた方が面白かったのではないか。ラストシーンも蛇足に思える。

 何も起こっていない場面で、何かが起こっている。不安や畏れと密着した緊張感に貫かれているのは、それを見逃していないからだ。マーサは何度も湖で泳ぐ。深い底に引きずりこまれないか、固唾を呑んで見守る。原題にはマーサ(Martha)やマーシー・メイ(Marcy May)だけでなく、マーレーン(Marlene)の名前も並ぶ。気がつけば、それが意味するところに新たなる恐怖が浮上している。





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