バーニーズ・バージョン ローマと共に

バーニーズ・バージョン ローマと共に “Barney's Version”

監督:リチャード・J・ルイス

出演:ポール・ジャマッティ、ダスティン・ホフマン、ロザムンド・パイク、
   ミニー・ドライヴァー、レイチェル・レフィブレ、スコット・スピードマン、
   ブルース・グリーンウッド、マーク・アディ、ソウル・ルビネック、
   アトム・エゴヤン、デヴィッド・クローネンバーグ、ドゥニ・アルカン

評価:★★★




 反射的に「ワン・デイ 23年のラブストーリー」(11年)を思い出す。人生の儚さ、ものの哀れと密着した余韻を残すからだ。けれどこちらは、単純な男性目線に絞られる分、親しみやすさが格段に増している。バーで意気投合した他人と飲み食いしながら、彼の半生を聞かされているような、そういう類の親しみが好もしい。

 『バーニーズ・バージョン ローマと共に』の主人公の人生を眺めていると、人生は悲劇であり喜劇なのだと痛感する。物語はタイプのまるで違う三人の女と結婚した彼の人生の中でも、特に悲劇と喜劇が一緒くたになった部分を切り取る。その繰り返しと言い換えても良い。当人には悲劇でも、他人からすれば喜劇。その逆ももちろんある。

 それは主人公の人物造形により明確になる。好きなものは葉巻と酒、そしてアイスホッケー観戦。気の合う仲間もいるものの、基本はダメ男だ。辛辣で攻撃的で自分勝手で、時に人を策略にハメようとする。簡単に言えばろくでなしで、その基本線が崩れない。

 しかも、ポール・ジャマッティが演じる。風貌からしてハゲでデブでギョロ目でブサイクで…冴えない男をこれほど魅力的に演じられる男優はいないだろう。彼がシニカルに走る度、わがままに暴走する度、呆れながらも心のどこかで喝采を贈る。

 ジャマッティの起用の甲斐があったのは、三番目に結婚する女が登場するあたりからより鮮明になる。二番目の女と自分の結婚式の真っ最中、本物の愛を知ってしまってからの主人公の突っ走り方が可笑しいのなんの。エメラルドグリーンのドレスを着た彼女に一目惚れするや否や、結婚式であることなんてお構いなし、「ローマに行こう。ポポロ広場でランチをしよう」。彼女の住むニューヨークに押し掛けて「恋に落ちるのに結婚式も葬式も関係ないだろう」と言ってのける件や、紅葉のセントラルパークを夜景が浮かび上がる夜まで散歩する件もイイ。

 自分の都合しか考えない主人公なのに、どうしても憎めない。それは愛する女への想いだけは、いつでもどんなときでも揺るぎないものとして描かれるからだ。愛するがゆえに自分を窮地に追い込むことになる展開には胸を締めつけられる。人生は哀しいものだ。思い通りにはならないものだ。ジャマッティの身体を貫く愛が震えている。

 主人公の父を演じるダスティン・ホフマンが、この息子にしてこの親ありと言いたくなるすっとぼけ方で楽しい。警官であるホフマンは言う。「最高の仕事をする娼婦を逮捕するわけないだろう」。主人公に愛される女にはロザムンド・パイク。凛とした佇まいが美しく、その老い方も無理がない。ジャマッティに愛される女として、これ以上の説得力は望めないだろう。

 主人公の友人の死の謎について、さほど滑らかに捌かれていないのは惜しい。ただ、それを差し引いても、胸のざわめきが簡単に収まることはない。何十年にも渡る物語に、男の純情を見る。浮かび上がるのは、ジャマッティの不敵な笑みだ。





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