プレミアム・ラッシュ

プレミアム・ラッシュ “Premium Rush”

監督:デヴィッド・コープ

出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、マイケル・シャノン、
   ダニア・ラミレス、ジェイミー・チャン、ローレン・アシュリー・カーター、
   ショーン・ケネディ、キンバリー・パーフェット

評価:★★★★




 まだまだ太陽の光が降り注ぐ18時33分、車が行き交う街中から始まる。自転車で走行中のジョセフ・ゴードン=レヴィットが車に激突。空中に舞い上がり、そしてアスファルトに叩きつけられる。スローモーションが使われるこの場面で思うのは、主人公の痛みなんかではない。ゴードン=レヴィットの軽さこそが目に焼きつく。

 『プレミアム・ラッシュ』はゴードン=レヴィットの身軽さが大いに活かされたB級アクションの佳作だ。ゴードン=レヴィットが演じるのはメッセンジャーの青年だ。渋滞が日常茶飯事のニューヨーク、車と車の間を自転車ですいすいすり抜けながら荷物を届ける、アレだ。まずはそのカッコ良さを切り取ることに全力が注がれる。細く美しい金属フレーム、ノーギア、ノーブレーキの自転車に跨ったゴードン=レヴィットが、大渋滞の最中を自転車を自分の身体の一部として扱いながら疾走する。目的地をスマートフォンで確認はするものの、後は自分の力で勝負するのが好もしい。リズミカルな編集やスピード感ある撮影、高揚感ある音楽の力も借り、ゴードン=レヴィットが人間マシーンと化す。身体が重くては画面自体が重くなってしまったはず。丸刈りで爽やかなのも良い。

 話は極めて単純だ。曰く付きの荷物を運ぶことになったメッセンジャーが、それを狙う悪徳警官に追いかけられるというもの。これ以上ないシンプルさだけれど、それで正解。ややこしくしては人間マシーンから放たされる爽快さが湿ってしまったはずだ。メッセンジャーの頭の中で最善の経路がシミュレーションされたり、時制をシャッフルすることで緩急がつけられたり、適度な遊びが放り込まれて、平坦な物語を刺激する。

 ゴードン=レヴィットの武器は一流の技術力であり(アクロバティックな技の数々!)、土地勘と密着した知識であり、豪快な判断力と決断力。これに衝突するのが重量感ある車やハイテクノロジー、そして警官の粘り気たっぷりのしつこさだ。素人目には明らかにメッセンジャー側が不利なのに、そこを果敢に突破していくのが愉快痛快。交通取締官や恋敵との自転車レースが挟まれるのも気が利いているし、終幕にメッセンジャー同士の連携プレイや結束力が浮上するのも頼もしい。

 自転車という乗り物が映画と予想以上に相性が良いことを思い知る。前傾姿勢の高スピードというヴィジュアルもさることながら、常に回転を続ける脚から放たれる力強さが重要だ。ほとんど駆ける馬の脚と同じパワーを持っている。脚力がそのまま映画のエンジンになっている。煙の中からメッセンジャーが現れる画、階段をぐんぐん突っ切ったり急な方向転換で風を切ったり、曲芸師のように見せる画が出てくるわけだ。素晴らしくクール。

 悪徳警官の重心にしつこさが置かれているのも楽しい。荷物を手に入れなければ未来はないと悟った警官が、絶対に生き延びるという執念が絡まった権力を振りかざす。マイケル・シャノンがいつもと同じ役柄を演じているようで、実はこれまでのどんな役柄よりも人間らしさを見せるのに注目だ。役柄の器の小ささが、ここではプラスに働いている。

 ニューヨークには1,500人のメッセンジャーがいるという。彼らは1日80ドルを得るため、障害物だらけで迷路のような街を駆け抜ける。その危険な運転は違法に違いないし、市民から疎まれることもあるだろう。しかし、それを完全に忘れさせてしまうのは、そのミニマムなスタイルには抗い難い魅力があるからだ。主人公がスーツなんて着たくないと、この仕事に就くのも頷ける。それだけで映画の勝利と言って良い。





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