シュガーマン 奇跡に愛された男

シュガーマン 奇跡に愛された男 “Searching for Sugar Man”

監督:マリク・ベンジェルール

出演:ロドリゲス

評価:★★★★




 映画ファンにとってロドリゲスと言ったら、今はロバートだろう。タフな女好きな人ならミシェルを思い浮かべるかもしれない。マニアックにフレディやアダムと答えることも考えられるか。とにかく、70年代に二枚のアルバムを出したアメリカの歌手を連想する人は、ほとんどいないだろう。『シュガーマン 奇跡に愛された男』は商業的失敗により姿を消した彼を探る音楽ドキュメンタリーだ。

 物語のいたるところでロドリゲスの楽曲が流れる。これが耳から離れない。ソフトな歌声や哀愁漂うメロディ、優しいギターの音色も良いし、何より歌詞がざわざわと胸に沁みる。

 ロドリゲスが奏でるのは労働者階級の生活に密着した楽曲だ。デトロイト、スラム街の詩人とも呼ばれる彼は、当時のミュージシャンの多くがそうだったように、社会を映し出す鏡として歌をデザインしていく。そこに驕りはない。卑しさもない。実に誠実に生活を織り上げる。これが全く売れなかっただなんて、信じられない。

 ところが、これが南アフリカでは大ヒットしたのだという。国民の誰もが知っているほどにバカ売れしたという。当時の南アフリカはアパルトヘイト真っ只中。ロドリゲスの楽曲は思いがけず、反権力の象徴として人々の心を掴む。この映画が幸運だったのは、物語のエンジンがその南アフリカに住むファンの音楽愛を燃料としている点だ。ケープタウン、ロドリゲスの曲に惚れ込んだ者が、謎に包まれたロドリゲスについて調べ始める。ロドリゲスはライヴ中に拳銃自殺したらしい。本当の彼を知りたい。純粋なファン心理が根底にあるのが可愛い。

 歌詞の中に出てくる地名やレコード売り上げの収益の金の流れから消息を調べたり、インターネットを使った捜索が行われる。物語にはそうした過程で出会ったのであろう人々が登場し、ロドリゲスについて証言していく。バーテンダーやレンガ職人、建設現場の同僚らが出てくるだけでも人柄が察せられるようで嬉しいのに、もっと笑みがこぼれるのは語る人々の顔が輝いていることだ。ロドリゲスを誇りに思っていて、それを隠せない感じだ。

 終幕の数奇な展開にはでき過ぎた、しかし有無を言わせぬ興奮が溢れている。生き方がまた人間臭いではないか。力のある楽曲、魂が入った楽曲というのは、場所を越え時を越え、歌い継がれていくものだということも証明している。もっとじっくりロドリゲスの楽曲を聴きたくなる。

 タイトルにもなっている「Sugar Man」が冒頭から何回か流れる。ドラッグの売人が出てくる。決して明るい歌ではない。しかし、そこには嘘偽りのない生きる叫びが刻まれている。





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