オンディーヌ 海辺の恋人

オンディーヌ 海辺の恋人 “Ondine”

監督:ニール・ジョーダン

出演:コリン・ファレル、アリシア・バックレーダ、
   アリソン・バリー、トニー・カラン、エミール・ホスティナ、
   デヴラ・カーワン、スティーヴン・レイ

評価:★★★




 アイルランドやスコットランドにはセルキーと呼ばれる妖精がいるという。海ではアザラシの皮をまとっていて、陸地に上がるときには人間の姿になる。海ではアザラシという点に若干の引っ掛かりを覚えるものの、人魚に負けないロマンティックな生物ではないか。『オンディーヌ 海辺の恋人』はセルキーをモチーフにしたファンタジー・ロマンだ。

 ニール・ジョーダンらしい美しい画がたっぷり出てくる。海から眺めるアイルランドの風景。光が降り注ぐ水の中。朝日に照らされた水面。月夜の洞穴。もの哀しくも情感の漂う海辺の町。そこにセルキーの歌声が被さってくるのだから堪らない。弦の音が重ねられるのもおつな味わいだ。

 しかし、最も美しいのがセルキーであることは間違いない。ある日コリン・ファレル扮する漁師が、魚を獲るための網に美しい女が引っ掛かっているのを見つける。漁師は女を介抱し、一緒に暮らし始める。幸運が舞い込んでくる。漁師の娘は女をセルキーだと考える。当然セルキーを演じる女優が重要になる。

 ジョーダンが無名の女優を起用したのは当然だ。色のついた女優がセルキーを演じては、まっさらな目で彼女を見られないだろう。その点、アリシア・バックレーダは透明感のある美貌も謎めいた雰囲気もセルキーにピッタリだ。本当にセルキーなのだろうか、それとも人間なのだろうかという微妙なところを美しく演じている。彼女が水の中から顔を出して陸に向かってくる場面にグッと見入る。

 現実と幻想の対比にポイントが置かれる。セルキーが登場する場面は美が強調される。寂しい風景の中に僅かな明かりが灯る。しかし、そうでない場面は漁師に降りかかった現実が前面に出る。アルコール依存症。障害を持った娘。元妻との不和。仕事の不調。生きる孤独。ジョーダンは現実と幻想の境界を魅力的に切り取っている。橋渡しをするのがセルキーであることは言うまでもない。

 セルキーの登場により生活に疲れた漁師は癒しを感じていく。これが生温くならなかったのは、ほのかな希望を感じながらも、しかしいつかそれを失ってしまうかもしれないという、畏れと密着した思いを漁師が抱えていることを忘れていないためだ。幸運と悲運が混じり合った気配が染み入ってくる。

 終幕になるとセルキーが本物なのか否か、明かされる。突如サスペンスタッチに転じる。漁師は禁酒を破って愚行に走る。セルキーが網に引っ掛かった理由が明かされる。それまでの魅力的な境界が人間の俗な振る舞いや本性に侵食される。これはかなり際どい選択だ。作品の表情がガラリと変わる危険がある。しかし、ジョーダンはギリギリのところで映画のトーンを守ったのではないか。画面から詩情が消え去る寸前に踏み止まったのではないか。ジョーダンは現実の中に潜むファンタジーを信じているような気がする。ジョーダンの信じる魔法がサスペンス劇の中にも漂っている。





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