メッセンジャー

メッセンジャー “The Messenger”

監督:オーレン・ムーヴァーマン

出演:ベン・フォスター、ウッディ・ハレルソン、サマンサ・モートン、
   ジェナ・マローン、スティーヴ・ブシェーミ、イーモン・ウォーカー、
   ヤヤ・ダコスタ、ポーシャ、リサ・ジョイス

評価:★★★




 『メッセンジャー』に戦場は出てこない。けれど、戦争が生み出す現実は容赦なく伝わる。戦争により傷つけられるのは戦場に限ったことではない。よく聞かれることではあるものの、それを毛穴に入り込むように描き出す作品は案外少ないのではないか。

 タイトルは主人公が就く任務から来ている。訃報を遺族に伝える仕事を任される。この切り口が面白い。メッセンジャーにはルールがある。告知は身元確認がなされてから24時間以内にしなければならない。最近親者にしか伝えてはならない。最近親者には触れてはならない。私情を差し挟むことなく、事務的要素を色濃くして当たることを強いられる。

 中でも「最近親者に触れてはならない」ルールには考えさせられる。愛する人の死を知らされて動揺している相手が目の前にいるのに、手を差し伸べることすらできないとは…。主人公が思わず遺族の肩を抱き、相棒でもある上司に叱責される場面が心に残る。上司だって、それが絶対に正しいとは思っていない。なぜなら死ぬのも遺されるのも伝えるのも人間だから。

 そう、この映画は結局、人間という生き物の本能を描いている。人間はデリケートだ。主人公は戦場で脚を負傷する。目の調子も悪い。けれど、より傷ついているのは心の方で、任務を淡々とこなしていく中に、それが静かに浮上する。ベン・フォスターは役柄に非常に誠実に取り組んでいると思う。

 主人公が訃報を伝えた新たなる未亡人に惹かれていくところは、メロドラマになりそうで、でもグッと踏み止まる。未亡人を物陰から見つめるというストーカー的行為から始まるのにはギョッとするものの、その後は傷を負った男女の心象を見世物にはしない真摯な姿勢が選ばれる。未亡人が干す夫のシャツに関する件など、人間の繊細かつ複雑な心理がよく出ていて感心する。

 相棒を演じるウッディ・ハレルソンの存在も人間の難しさを感じさせる。事務的に仕事をしているようで、彼もまた傷を抱えている。女好きを隠さない展開に笑う。傷を負っても、いやそれだからこそ温もりを求めずにはいられないのが人間だ。厳しさとおかしみを湛えたハレルソンの演技にホッとする。彼がいればこその、フォスターだ。

 それにしても、ドアを開けたとき、いきなり目に入るのがきつい寄り目と般若顔というのは、遺族じゃなくても腰を抜かすというものだ。それなのに、それをほとんど感じさせないのは、フォスターとハレルソン、両者の佇まいから嘘・偽りが排除されているからだろう。正しく真面目な映画だ。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ