ザ・ロード

ザ・ロード “The Road”

監督:ジョン・ヒルコート

出演:ヴィゴ・モーテンセン、コディ・スミット=マクフィー、
   シャーリズ・セロン、ロバート・デュヴァル、ガイ・ピアース、
   モリー・パーカー、ギャレット・ディラハント

評価:★★★★




 このところ映画界は終末論的世界が大流行している。21世紀を迎えても一向に明るい未来は描かれず、気が滅入るばかりなのだけど、『ザ・ロード』はそういう類似作品とは得られる手応えがまるで違う。不思議なことに、どこまでも詩的なのだ。いや、監督が「プロポジション 血の誓約」(05年)のジョン・ヒルコートであることを考えれば、当然か。

 設定自体はどこまでもハードだ。文明が崩壊してしまった世界。生き残った者は極僅か。主人公の妻も死んでしまった。食糧も尽き果てて、命ある者の大半は人を喰らって生き延びているのだから凄まじい。当然画面の色合いも暗くなる。灰色の世界がどこまでも続き、容赦ない現実を次々炙り出していく。簡単には生きられない状況下だけれど、それから目を背けない者だけが到達できる場所にある詩情が感じられるのが素晴らしい。極めて悲惨な日々。残酷な出来事が溢れ、それに立ち向かうのは容易ではない。静止し難い悲劇も、耐え難い苦痛もある。それでもファンタジーに逃げたりSFに飛躍することなく、ありのままを見つめ、それゆえに何がしかの「美」が見えてくるのだ。ヒルコートのこの世界観への偏執狂的側面が詩情に繋がっているのだろう。

 父と息子の南へ向かう旅は、まるで80年の人生を凝縮したかのように過酷だ。気を抜くとすぐに襲われてしまうし、時には冷酷になることも強いられる。父は息子を守りながら歩みを進めていくだけではない。彼は生きる全てを教え込んでいく。キレイゴトだけでは生きてはいけない現実を胸に刻み、まだ幼い命には辛いことだと承知はしていても、場合によっては強引になることを怖れない。喰うことや寝ることはもちろん、息をすること、歩くこと、隠れること、逃げること、立ち向かうこと、手を差し伸べること、そして場合によっては死を選ぶこと…旅の全てが尊く見えてくる、その迫力よ。父の大きな愛が息子を包み込み、それゆえに息子はそれに歯を食いしばって応えるのだ。

 ハヴィエル・アギーレサロベのカメラは父と息子の姿を、その内面までじっくり映し出している。綺麗に撮るのではなく、真実を切り取ろうという信念が感じられる。それこそ役者たちの毛穴まで見逃さない丁寧さを基本に、しかし時には荒涼たる景色のダイナミズムを荒々しく捉える素晴らしい冴えを見せる。生きる意味を見逃さない。

 父親役にヴィゴ・モーテンセンが選ばれたのは当然のことだろう。役柄の魂を掬い取る術を持つ役者はそうそういない。大きな絶望が蔓延る中、息子という小さな希望に賭ける。生きていく難しさをモーテンセンは生身の人間であることを決して忘れることなく演じている。無敵ではない。弱さも抱えている。しかし、折れそうな気持ちを必死に支える心を凄味たっぷりに描き出す。荒れた指先からも、ヒゲモジャの顔からも、刻まれたシワからも、「生」というものが力強く見えてくるではないか。





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