クラウド アトラス

クラウド アトラス “Cloud Atlas”

監督:トム・ティクヴァ、アンディ・ウォシャウスキー、ラナ・ウォシャウスキー

出演:トム・ハンクス、ハル・ベリー、ジム・ブロードベント、ベン・ウィショー、
   ジム・スタージェス、ペ・ドゥナ、ヒューゴ・ウィーヴィング、
   ジョウ・シュン、ジェームズ・ダーシー、キース・デヴィッド、
   デヴィッド・ジャーシー、スーザン・サランドン、ヒュー・グラント

評価:★★★




 「カルマ」や「輪廻転生」と言った言葉を思い出すのは、時代や場所の異なる6つのエピソードを描く物語で、著名な俳優たちが何役も演じているからだ。人種や性別も関係ない。男優が女を演じる場合もあれば、英国俳優が韓国人を演じる場合もある。そして実際、前世で結ばれたカップルが、後の世で再び愛を紡ぐ。罪であれ善意であれ、それは人の生命として繋がり続ける。『クラウド アトラス』のテーマだ。

 けれど、最も重要視されるのが人物の生まれ変わりではないことは明白だ。エピソードの主人公には共通の痣がある。理想家の弁護士、同性愛者の作曲家、秘密を握る女性記者、思いがけず金持ちになる編集者、意思を持ったクローン、そして罪の意識を抱えるヤギ飼い。彼らは置かれている状況が全く異なる。しかし、いつしか強い信念を持ち、立ち塞がる障害に果敢に攻め込んでいくという点で共通している。意識の転生とでも言うべき繋がりこそがエピソードとエピソードを繋ぐ架け橋になる。

 その試みの意図するところは分かるものの、案外胸に残るものが少ないのは、「意識の転生」に捻りがないからだろう。描き出されるそれぞれの戦い、そこから生まれる強い想いが、あまりにも単純明快。簡単に共感できてしまうのが物足りない。差別や不寛容、搾取や虐待、独裁や無差別の殺戮。悪しき物として設置される対象とそれに立ち向かう尊い信念という勧善懲悪的世界に落とし込まれ、その境界にこそあるだろう揺らぎは全く無視される。エピソードのいずれにも、翳りだとか無常だとかをスパイスにした奥行きが感じられないのはそのせいだ。

 後から思えば、俳優が何役もこなすのも、技として安易に思える。トム・ハンクスやハル・ベリーら誰もが知っているスターはちょっと顔を出すだけで気が散るし、本来の姿を隠したヒューゴ・ウィーヴィングやペ・ドゥナらの姿に気づくとまた曲者発見の喜びに浸ってしまう。そしてさらには、別の時代との関係性まで深読みしてしまい、かえって意図せぬ混乱を覚えるハメになる。メイキャップの出来映えもまちまちだろう。ジム・スタージェスやジェームズ・ダーシーの韓国人扮装は無理がある。と言うか、あれが欧米人の思うアジア人か。ステレオタイプに苦笑い。

 ヴィジュアルが面白かったのは、文明が滅びてから106度目の冬を迎えた世界を描くエピソードだ。陸地がほとんどなくなり、ほとんど原始に帰ったような空間。未来を描く際、後半した風景が広がるというのはありきたりではあるものの、空と海、そして陸地の対比が思いの外、目に焼きつく。演出も他の時代よりも気合いが入っている。

 哲学的な深読みをしようと思えばいくらでもできる。解釈の余地は大変広い。ただ、もっとこの世界観に入り込みたいという吸引力には乏しい。観る者を登場人物の一人として巻き込んでしまうような大技が必要な題材ではないか。受け継がれていく魂を目撃しても、距離をとってしまう自分に違和感を感じる。





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