最高の人生のはじめ方

最高の人生のはじめ方 “The Magic of Belle Isle”

監督:ロブ・ライナー

出演:モーガン・フリーマン、ヴァージニア・マドセン、マデリン・キャロル、
   キーナン・トンプソン、エマ・ファーマン、C・J・ウィルソン、
   アッシュ・クリスチャン、デバーゴ・サンヤル

評価:★★




 静かな避暑地。穏やかな湖。その中に浮かぶ島。緑が美しい森。胸をそっと叩く虫の音。優しく心を撫でる風。手作りのいかだ。愛らしい犬。良識的な人々との交流。大昔に書いた手紙。陽が落ちると聴こえてくるピアノ。…思いつくままに言葉を並べたわけだけれど、これだけでどんな映画か分かるというものだ。スリラーやアクションなんかにはなりそうもない。コメディも難しそうだ。心温まる人情劇になると見るのが妥当だ。

 しかも、監督がロブ・ライナーときた。穏やかな作風で人生を笑いと涙で紡いできた職人監督だから、今更冒険心溢れる物語は難しいだろう。皮肉が効かせられれば良い方かもしれない。「ちょっと良い話」の匂いをぷんぷんさせる題材を、「ちょっと良い話」が得意な作家が手掛けたのが『最高の人生のはじめ方』だ。

 果たして仕上がりは、予感通りのものに落ち着いている。今は筆を断ち酒浸りの毎日を送る西部劇専門の小説家が主人公。孤独で人生に怒っている頑固ジジイが、一夏を過ごす避暑地で、離婚協議中のシングルマザーとその娘たちと出会う。傷ついた魂同士が触れ合い、助け合い、癒し合い、人生に希望を見出していく。なるほど安心感がある。不快ではない。けれど、刺激もない。

 とは言え、そうした捻くれた姿勢をやめて、物語の流れに身を任せれば快感が待っているのかもしれない。頑固ジジイをモーガン・フリーマンが演じているのだから、マイナスの気分になることなど、かえって難しいだろう。もはや存在自体が詩的なフリーマンだから、言葉の隅々までが魔法のように輝く。「ひとつのドアが閉まれば、また別のドアが開く」「そこにはないものを捜し続けろ」といった、いかにもなセリフも聞かせるけれど、むしろ日常の言葉の方が面白い。「レジの横にサラミを置いても客は見向きもしない」「ナイフを見れば持ち主のことが分かる」なんてセリフが生き生きと飛び出す。

 だから頑固ジジイのキャラクターをもっと描き込めば、水準以上の出来映えにはなったのではないか。頑固と言いながら、心を閉ざしていると言いながら、意外なほど心優しきジジイなのだ。知りもしない人のためにスピーチをし、無関係の少女に言葉を教え、筆を断ったはずなのに新しい短編を少女に贈り、障害のある青年の面倒を看て、犬の世話も怠らない。何と言うか、最初から立派な人物でしかなく、その彼と心優しき人々との掛け合いに、グッと惹きつけられるドラマが生まれるはずもない。善人の、善人による、善人のための映画。尻がむず痒い。

 ジジイは少女にイマジネーションの大切さを説く。目に見えないものを見る素晴らしさを体験させる。想像力が可能性を生み、希望に繋がり、未来を切り開く糧になる。語り掛ける作り手こそ、想像力が欠けているだなんて、それがいちばんの皮肉とは、やけに虚しいではないか。





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