アリス・イン・ワンダーランド

アリス・イン・ワンダーランド “Alice in Wonderland”

監督:ティム・バートン

出演:ミア・ワシコウスカ、ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター、
   アン・ハサウェイ、クリスピン・グローヴァー、マット・ルーカス、

声の出演:アラン・リックマン、マイケル・シーン、スティーヴン・フライ、
   ティモシー・スポール、ポール・ホワイトハウス、バーバラ・ウィンザー、
   マイケル・ガフ、クリストファー・リー

評価:★★




 19歳になったアリス・キングスレーは幼少時に迷い込んだ不思議の国のことをすっかり忘れている。あんなにインパクトのある冒険を忘れるものだろうかとも思うのだけれど、よくよく我が身を思い返してみると、子どもの頃の記憶はなんともまあ曖昧で確かなことなどほとんどない。ルイス・キャロルの原作の内容にしても登場人物こそ覚えていても、ストーリー展開などほとんど忘れてしまっている。大人になるというのはそういうことなのだろう。古い記憶を少しずつ捨てていき、新しい記憶により自分を固めていく。『アリス・イン・ワンダーランド』はまず、目のつけどころが冴えている。そのままのアリスを取り上げなかったのが面白い。さすがはティム・バートンだ。

 当然のように不思議の国の作り込みがいちばんの見所になっている。アリスが再び白ウサギについていったことから迷い込んでしまうその場所は、現実とはかけ離れたマジカルな世界。そこには人間を小さくする薬と大きくする菓子があり、動物は喋り、ネコは消える。想像力と創造力をいくらでも注ぐことのできる、クリエーターとしては最もやり甲斐のある空間なのだ。ただ、そうして提示される映像の結論が3D映像というのは、いかにも安易だ。別世界に迷い込むと急に映像の立体感が強調されて、でもだから何だっていうんだ。「アバター」(09年)的発想が幼い。どうしたんだティム・バートン。

 いや、美術や衣装、それにキャラクター造形には、いかにもバートンらしい面白いところは多々ある。バートン映画でお馴染みの奇怪に捻じ曲がった木々。見るからに毒を持っていそうなキノコ。ハートをモチーフにした赤の女王サイドの建築デザイン。衣装もイチイチが念入りに織り上げられていて、マッドハッターのインチキマジシャン風の大きなリボンスカーフや赤の女王のトランプ風ドレス、アリスが赤の女王に貰ったキューティーハニー風ドレスなど注目要素が溢れている(ハートのジャックのハート型眼帯も可愛い)。最も力を入れて演出されているのは赤の女王で、何かというと「首をはねよ!」と言い放つのが可笑しい。残酷さをとてもユニークに見せている(ただし、ディズニー調でまとめられている)。

 問題は3D映像を意識したからだろう、画面に必要以上に視覚効果が持ち込まれている点だ。視覚効果を補助的に使うというのではない。視覚効果をメインに置いた画面作りになっているのだ。構図があからさまなのも興醒めなのだけれど、それよりも人工的になってしまい、全く手作りの温かさが感じられないのが寂しい。映像の加工が踏み入れてはいけないところに及んでいると言い換えてもいい。そもそも不思議の国ではメインの役者はたったの4人しか出てこない。後のキャラクターは皆、CGによって作り出されている。その内のひとり、赤の女王は頭が恐ろしくデカいという設定で、役者そのものの体の動きが見られず、全くの漫画である。こういうのは映画で人間を見たいと思っている者には苦痛なのだ。

 アリスを演じるミア・ワシコウスカは時折驚くほどグウィネス・パルトロウにそっくりではあるものの、まずまずの健闘。序盤は清楚なお姫様風なのも終幕ジャンヌ・ダルク風に変身するのもなかなか良かった。ジョニー・デップは彼が演じる必要性があまり感じられず、ヘレナ・ボナム=カーターは前述のように動きがコミック化されてしまいお気の毒(バカ殿にしか見えないメイクは素敵だけど。そして最も美味しい役柄であることは間違いないのだけど)。アン・ハサウェイは常に手をひらひらさせているのが可笑しくて妖しい。彼女のキャラクターをもっと膨らませて、善人が持つどす黒さを描き出していたら、もっと良かったのに。ちょっと機械的になり過ぎてしまった感がある。

 バートンが作り出すファンタジー世界がこれまで魅力的だったのは、そこにコンピュータでは作り得ないイマジネーションが溢れていたからだ。CGが使われても、あくまでも前面にあったのは職人たちが手作りで創造した、直に感じられる芸術だった。新しく迷い込んだ不思議の国にはそれが決定的に欠けている。やっぱり思ってしまう。どうしたんだティム・バートン。早く我に返って欲しい。そう言えば不思議の国には、お馴染みの虐げられる者を優しく見守る視点もなかった。





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