海の上のバルコニー

海の上のバルコニー “Un balcon sur la mer”

監督:ニコール・ガルシア

出演:ジャン・デュジャルダン、マリー=ジョゼ・クローズ、
   サンドリーヌ・キベルラン、ミシェル・オーモン、
   クラウディア・カルディナーレ、トニー・セルヴィッロ

評価:★★★




 マリー=ジョゼ・クローズの佇まいに魅せられる。黒く縁取られた目。しわが入り始めた目尻。黒が混じったブロンド。艶が滲み出るうなじ。マゼンタカラーの唇。登場場面からミステリアスな空気を発散、画面を美しく優雅に盗んでしまう。アルフレッド・ヒッチコック映画のヒロインみたいだ。男が見入ってしまうのも無理はない。

 男はジャン・デュジャルダンが演じる。デュジャルダンとクローズは幼少時代、フランス支配下のアルジェリアで一緒に過ごした仲。お互い初恋の相手だ。独立戦争の混乱により離れ離れになっていたのが、数十年ぶりに再会を果たす。いかにも映画的な設定と展開。当然ふたりは気にし合う。惹かれ合う。求め合う。分かっていても、うっかり彼らと同じように盛り上がる。

 ふたりが遂にセックスへと突入するときの感じがいやらしくて良い。回想場面では幼い顔と身体で、初々しい初恋を演じていたふたりが、あぁ、思いがけない再会を情熱に変換させ、熱く抱き合う画よ。「貪り食う」なんて言葉が似つかわしい息遣いにぞくっとくる。人間は、誰しも成長する。成長するというのはこういうことでもあるのだとよく分かる。不穏な空気の漂うアルジェリア、幼少期の思い出の共有が隠し味になっているのは言うまでもない。

 ふたりが再会するプロヴァンスとアルジェリアの違いも心に残る。美しい景観が広がるプロヴァンスは、なんてことのない街角も絵になる情緒あり。光の優しさも嬉しい。それと較べると、アルジェリアは砂埃が舞い、街は雑多な感じがある。ふたつの場所の違いが時の流れやら歴史の影やらを寂しく映し出す。人の孤独も際立ってくる。

 問題はジョゼ=クローズの正体が明らかになってからだ。女好きの役が板についているデュジャルダンは、初恋の少女は既に死んでいることを知る。では、身体を重ねたあの女は一体誰なのか。正体はあっさりと判明して、物語の表情がガラッと変わる。犯罪の匂いが濃くなる。それを装飾するのは「片想い」だとか「メロドラマ」だとか「夢物語」だとか、序盤の涼しげな空気とは対極にある言葉だ。愛が感傷に抱き込まれる。途端に吸引力が失せる。ミステリーが力をなさない。結局人間は謎めいたものに惹かれるものだと思い知る。真実を知り、しかし、その底の浅さ(と強引さ)に力が抜ける。

 すると、あぁ、前半あんなに魅力的だったジョゼ=クローズが、どんどん庶民臭くなるから驚く。思い出を通して眺めていたものが、そのヴェールを剥ぎ取られ、居心地悪くしているみたいだ。演出もあるのだろう。

 『海の上のバルコニー』は記憶を考察した映画と言えるのかもしれない。無茶苦茶な思い込みの影に人間の哀しさが潜んでいる。その狙いを承知しつつ、男と女の動物的な結びつきを追求して欲しかったと思うのは、身勝手が過ぎるか。





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