ムーンライズ・キングダム

ムーンライズ・キングダム “Moonrise Kingdom”

監督:ウェス・アンダーソン

出演:ジャレッド・ギルマン、カーラ・ヘイワード、ブルース・ウィリス、
   エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、フランシス・マクドーマンド、
   ティルダ・スウィントン、ジェイソン・シュワルツマン、ボブ・バラバン

評価:★★★★




 思い返すとウェス・アンダーソンは、これまでずっと家族の肖像を描いてきた。凝視するのは、その関係に不意に現れる裂け目だ。そして、裂け目にハマる彼らの歪さを愛してきた。『ムーンライズ・キングダム』では対象が子どもの恋心に移ったものの、その姿勢に変わりはない。即ち、小さな島に住む少年少女の風変わりな恋模様を眺めながら、その歪さを愛する。愛することに全力を注ぐ。

 話はありそうでないものだ。とある劇の楽屋で出会ったサム(大木凡人を思わせるジャレッド・ギルマン)とスージー(少女と呼ぶには妙に色っぽいカーラ・ヘイワード)が、一年間の文通を経て、駆け落ちを決行する。子ども時代の時間の流れの遅さ、飽きっぽさ、移り気はしかし、ここでは無意味だ。彼らはサムが憧れている美しい入り江を目指す。サムのボーイスカウト活動が活かされるのが可笑しい。

 「リトル・ロマンス」(79年)を思い出さずにはいられないふたりの恋がスペシャルなものになったのは、アンダーソンによる細部の創り込みが緻密だからに他ならない。スタイルというものを持った作家、それも唯一無二の個性を持った作家の強み。細部に凝れば凝るほどに、画面が独特の色に染まっていく。

 断わるまでもない。細部とは美術であり衣装であり役者だ。構図はいちいちキマり、撮影は画面のバランスと奥行きを常に考えて移動する(ズームアップは極力避けられる)。とりわけ美術は胸に残る。スージーの家の捻りある内装と外観。テント内でさえ気を配られた壁模様の愛らしさ。家具や雑貨が命を与えられる。スージーのブルーシャドーと昆虫ピアス、サムのボーイスカウトスタイルがそこに放り込まれる快感よ。

 普通、ここまで細かく計算がなされると、頭でっかちになってしまうところだろうに、不思議と情感は豊かだ。驚くことにサムもスージーも笑顔を見せない。ほとんどがマヌケ面か仏頂面だ。それにも関わらず、彼らの想いには真実味が宿る。大袈裟に煽り立てることはなくても、真剣さがふわふわと浮かんでいる。その慎ましさがまた、アンダーソンの美意識と共鳴する。

 恋物語を右往左往するのは子どもだけではない。ふたりを追い掛ける大人たちもまた懸命になる。その不器用さが美しい画面の中で転げ回る。滑稽な様子を狙っていることは明らかなのに、それに嫌味がない。多分、アンダーソンの人間観が関係しているのだろう。人間は哀れで、淋しくて、哀しくて、でもそれが良いのだ。特に警官に扮したブルース・ウィリスの佇まいにしみじみする。

 サムとスージーが草原で落ち合う場面。下着姿で奇怪に踊る場面。トランポリンの横で想いを確かめ合う場面。目に焼きつくショットは多い。現実の過酷さに直面しながら、いずれもふたりが輝いている。世界が揺れる。そこには確かに愛がある。





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