アウトロー

アウトロー “Jack Reacher”

監督:クリストファー・マックァリー

出演:トム・クルーズ、ロザムンド・パイク、リチャード・ジェンキンス、
   デヴィッド・オイェロウォ、ヴェルナー・ヘルツォーク、
   ジェイ・コートニー、ジョセフ・シコラ、ロバート・デュヴァル

評価:★★




 開巻のムードがなかなか良い。ピッツバーグの川沿いで、接点のない道行く5人が狙撃により命を落とす。若い刑事を中心に捜査が始まり、元陸軍狙撃兵が逮捕される。尋問が始まる。一体何が始まるのか。なぜ5人は殺されなければならなかったのか。寂しげな空気が立ち込める空間に謎が浮かび上がる。ミステリーの導入部として無駄がない。

 『アウトロー』はおそらく、ハードボイルドなイメージを目指している。尋問シーンまで一切セリフが流れないことに象徴されるように、無駄な装飾は極力削ぎ落とし、謎めいた事件とそれを取り巻く闇の深さを探る。思い切り気取った画面が次々出てくるのが可笑しい。ただ、どうもハードボイルド映画のパロディに見えてしまうのは、画面の中心にいるジャック・リーチャーという名の主人公の輪郭がはっきりしないからだ。

 リーチャーは元陸軍兵。トラブルを起こして除隊してからは、法やしがらみに縛られることのない生活を送っている。信じるものは、自らの正義のみ。…というわけで、リーチャーが非情に正義を暴走させていくところに面白味があるはずなのに、どれだけリーチャーが暴れても、はみ出し者的な魅力は浮上しない。長い番号もアッという間に覚える記憶力。一流のライフルの腕前。速さと重量感抜群の肉体能力。判断力を最大限に活かしたドライヴ技術。小さな情報を見逃さない観察力。挙げればキリがない秀でた能力が、まるで輝かない。

 おそらくトム・クルーズの主演が影響しているのだろう。クルーズ自身はいつもの笑顔を封印して非情な男になりきっているし、相変わらず身体は素早く動く。もう一歩で板さんになりそうな髪型も悪くない。ただ、「陰」の個性が色濃いリーチャーを演じるには、その明るい資質が大いに邪魔となる。魅せれば魅せるほど、その差が歴然となる。アクション映画ではあるものの、クルーズの全力走は見当たらない。要するに、リーチャーはあくまで静かに冷静に事を進め、でもそれが派手なクルーズの色と溶け合わない。創り込まれたキャラクターが、スターパワーに敗北する。

 黒幕のアジトに乗り込むクライマックス場面が、突如「エクスペンダンブルズ」(10年)のノリになるのは困惑する。いや、あちらほど能天気ではないし、洗練された画面にはなっている。ただそれでも、兵器への偏愛が見られたり、銃弾が大量に消費されたり、80年代映画的アクションの快感を目指しているのが透けるのにはギョッとする。

 この場面ではクルーズのナルシスト臭も濃厚に漂う。いや、スターなんてものは誰でもナルシシズムを抱えているものだ。でも、こんな風にあからさまになるのは今時珍しいのではないか。命が脅かされても、守るべき人が危険に晒されても、決してスタイルを崩さない。都合良く男の美学として褒めることも可能だけれど、そう呼ぶには「本気」が過ぎるだろう。いや、クルーズが本物のスターである証でもあるのだけど…。

 尤も、クルーズの浮き方よりも気になるのは、やたら顔のクローズアップが多いところだ。観る者に圧迫感を与える構図が大量に出てくる。人物と人物の距離も短くて、息苦しさを増長する。そうか、作り手は題材や人物に寄り過ぎてしまったのかもしれない。客観的に自分のスタイルを眺める術がないと、ハードボイルドは自己満足に終わる。





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