愛のあしあと

愛のあしあと “Les bien-aimés”

監督:クリストフ・オノレ

出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、キアラ・マストロヤンニ、
   リュディヴィーヌ・サニエ、ルイ・ガレル、ミロシュ・フォアマン、
   ポール・シュナイダー、ミシェル・デルペシュ、ラシャ・ブコヴィッチ

評価:★★★




 いきなり見ものだ。1960年のパリから始まり、道行く女たちの足元が映し出される。彼女たちが履いているのは、流行のパンプスだ。カメラが足元から時代を見せていくのが面白い。リュディヴィーヌ・サニエは靴店で働いていて、閉店後にロジェ・ヴィヴィエの靴をくすねる。赤茶色のそれがまた、とても可愛い。この場面のサニエはプラチナブロンドに真っ赤なルージュ。薄いピンクのトップに、太く黒いベルト。完璧だ。あぁ、すっかり見惚れていると、突然娼婦になってしまうから驚く。

 それからも60年のフランスの描写が念入りだ。サニエがチェコスロバキアから来た医師と恋に落ちるときの、水玉コートとグリーンのスカートの組み合わせもグッと来るし、部屋の内装や家具、その空間設計、街角の風景や車もいちいち魅せる。デザインの面白さもさることながら、色合いが素晴らしい。原色のような主張の強い色は積極的に避けられ、溢れ出るのはパステルカラー。街全体がお菓子でできているような印象すらある。寝乱れたベッドだけでも、あぁ、なんてカッコイイ。眺めも匂いも良い。

 そして、『愛のあしあと』の面白さは唐突に終わりを告げる。この映画、1960年から2007年まで、40年以上に渡る時代が舞台になっている。主人公はサニエとカトリーヌ・ドヌーヴが二人一役を演じる浮気性の女と、彼女の遺伝子を確実に受け継いでいるその娘だ。母と娘は理性と本能を衝突させることはない。常に本能優先に、人を求めていく。それ以上でもそれ以下でもない描写の羅列に終始する。

 …となると、時代色が薄れ、つまり画面の面白さが消えていくと、物語からも活気は奪われていく(1978年のパリまでは何とか魅せる)。愛した愛されただけの話しか残らない。プラハやロンドン、ニューヨークにモントリオールと言った次々変わる背景も力にならない。「プラハの春」「エイズ」「9.11テロ」といった歴史や社会問題もさほど大きな意味を持たない。

 愛することが人生だというのが作り手の主張で、なるほどそれには全く文句はないのだけれど、母娘のポイントとなる出来事を取り上げるだけでは、結局平凡なメロドラマの域を出ない。ふたりの女の人生をダイジェストで見せられている気分になる。

 キャストが歌を聴かせるミュージカル要素があるのは、見せ場のひとつなのか。誰も彼もが全然巧くないけれど、フランス語のあの独特の滑らかさのおかげで苦痛ではない。フランス人は全然歌い上げないのが良い。普段喋っているのと何ら変わらない力の入れ具合。ぼそぼそと、でもなんだかオシャレ。キメ過ぎないでキメてしまうところが、羨ましい。





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