アルバート氏の人生

アルバート氏の人生 “Albert Nobbs”

監督:ロドリゴ・ガルシア

出演:グレン・クローズ、ジャネット・マクティア、ミア・ワシコウスカ、
   アーロン・ジョンソン、ポーリーン・コリンズ、
   ブレンダン・グリーソン、ジョナサン・リース=マイヤーズ、
   ブロナー・ギャラガー、ブレンダ・フリッカー

評価:★★★




 『アルバート氏の人生』には、男として生きる女がふたり出てくる。舞台となる19世紀のアイルランドは女に冷たく、一人で生きていこうものなら極めて惨めな人生になることが目に見えているからだ。女である自分を捨ててまでも、男になることを選ぶ、その精神的苦しさよ。

 そうした生き方を選ぶ女たちを演じるのはグレン・クローズとジャネット・マクティアだ。この内、男装の完成度が高いのはマクティアだ。スラッと高く伸びた身長。コクのある声色。自信に溢れた眼差し。所作も美しく、かつ野性味がある。マクティアという女優を知らなかったら、本当は女ではないかなんて疑いもしないかもしれない。

 マクティアに較べると、「女」が見えるクローズはしかし、精神的自由を勝ち得ているマクティアが放出する空気を吸い込み、演じるアルバート・ノッブスの抑圧された様々な感情を鮮やかに解放させていく。ホテルのウエイターとして常に折り目正しく振る舞う「彼」が気を緩められるのは、自分の部屋だけしかない。マクティアの登場により、その息苦しい毎日を受け入れていた自分を変化させていくところを、クローズが目の動きひとつで、魅せる。

 ノッブスの人生は切なさに満ちている。私生児として生まれ、母の写真だけを拠りどころにし、14歳にして「男」を選ぶ。性を隠すというのは、あぁ、実に大変なことだろう。ノッブスが仕事を終えて戻った部屋で、マットレスの下に隠した金を数える画が、微笑ましいやら、哀れやら、可笑しいやら…。

 しかし、もっと心をざわめかせるのは、ノッブスがミア・ワシコウスカ扮するメイドに迫る件だろう。ノッブスは孤独を何よりも恐れ、しかしそれに雁字搦めになり、けれど何とかそれから逃れようと一緒に生きるパートナーを欲する。ワシコウスカには粗野な想い人がいるというのに…。ノッブスが金を毟り取られるエピソードが胸に来る。やっと自由を手に入れる決心をし、なのにまるで勘違いの方向に翻弄される。

 ノッブスは度々夢を見る。未来の画は残酷で、でもホッとするそれでもある。その中ではノッブスは完全に自由だ。愛する人も傍らにいる。色味が抑えられていた画面が明るくなる。同じようにノッブスが「女装」して海で戯れる場面も味わい深い。詩情も漂っている。

 ロドリゴ・ガルシアはアルバート・ノッブスの人生を大袈裟には演出しない。映画的なドラマ性を強調しようと思えばいくらでもできる題材だというのに…。おそらくノッブスが見世物になってしまうことを恐れたのではないか。賢明な判断だ。愚かと無知の泉に落とし込むことなく、ノッブスを凝視する姿勢を買う。





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