BEST10 & WORST10 2012 Vol.1

2012年 BEST10



1. ミッドナイト・イン・パリ “Midnight in Paris”
 監督:ウッディ・アレン
 出演:オーウェン・ウィルソン、レイチェル・マクアダムス、マリオン・コティヤール

 いつも以上に肩の力の抜けたアレンが、映画で遊ぶ。「偉大なるマンネリ」の再構築と言うべき主人公が、1920年代のパリに自ら迷い込み、そして観る者を誘い出す。念入りな時代描写に酔う。しかしアレンは、いつしか夢が醒めるものだとも知っている。いつの時代も「過去は偉大なるカリスマ」。その事実が夢物語に僅かな苦味を加える。あぁ、なんと幸福なひととき。



2. ドライヴ “Drive” 
 監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
 出演:ライアン・ゴズリング、キャリー・マリガン、アルバート・ブルックス

 男の細胞を形成するのは一流の運転技術、地理に対する造詣、知性、判断力、それらを最大限に活かす冷静沈着さと度胸。画面に漂うのは詩情。しかし、ハズしや遊びも顔を出す。それゆえ新しい風が吹く。ロマンティシズムが溢れても、陶酔には陥らない。ロサンゼルスの街並は妖しくて、鋭くて、艶っぽくて…男の頬を優しく撫でる風が、その孤独を包み込む。



3. 裏切りのサーカス “Tinker, Tailor, Soldier, Spy”
 監督:トーマス・アルフレッドソン
 出演:ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、トム・ハーディ、マーク・ストロング

 混乱を強いられる。重要な登場人物が多い。それぞれを結ぶ糸は複雑に絡み合う。しかし、それでも心は快楽の水で満たされていく。1970年代ロンドンの徹底した再現。念入りな孤独の匂い。時折落とされる鮮やかな色。張り詰めた緊張。演技を止められた役者。何かが枯れ果ててしまった哀しみを浮かべた主演男優の顔が目に焼きつく。映画の芸に魅せられる。



4. ジェーン・エア “Jane Eyre”
 監督:キャリー・ジョージ・フクナガ
 出演:ミア・ワシコウスカ、マイケル・ファスベンダー、ジェイミー・ベル、ジュディ・デンチ

 柔らかく瑞々しい香りの源はジェーン・エアだ。とりわけ立ち姿が素晴らしい。天に向かって真っ直ぐ伸びた背骨。ニュアンス豊かに表情を変える肌。彼女の周辺を念入りに織り上げることで、ジェーンの自由な精神が画面いっぱいに溢れていく。これまでで最も若々しいジェーンがいる。生命力と密接に結びついた意志の強さが、そのまま若さとなって感銘を与えている。



5. WIN WIN/ダメ男とダメ少年の最高の日々 “Win Win”
 監督:トーマス・マッカーシー
 出演:ポール・ジャマッティ、エイミー・ライアン、アレックス・シェイファー

 どん詰まりの毎日を生きる人々の、心の隙間を優しく埋める空気が大切にされる。他人と繋がることで彼らが見せる踏ん張りが、なかなかしたたかで、小ずるくて、しぶとくて、でも奇妙に温かで…。空虚な日々が表情を変えていく。そのグラデーションは傍から見ても美しい。幸せか否か、ここでは意味をなさない問いだ。ますます息苦しい毎日でも笑みが見える理由が優しく探られる。



6. 私が、生きる肌 “La piel que habito”
 監督:ペドロ・アルモドヴァル
 出演:アントニオ・バンデラス、エレナ・アナヤ、マリサ・パレデス

 アルモドヴァルが描く変態が魅力的なのは、社会的ルールからはみ出した彼らへの眼差しに、侮蔑が混ざっていないからだ。批判的な態度を封印し、まっさらのキャンパスで変態を躍らせる。すると倫理観が力を持たないその空間の中で、変態が伸び伸び輝き始める。憎しみと愛を大胆に擦り合わせ、凝視する勇気。変態に奥行きが出るわけだ。



7. アーティスト “The Artist”
 監督:ミシェル・アザナヴィシウス
 出演:ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ、アギー

 ストーリー自体はありきたりだ。それなのに若い息吹を感じる。生まれたての匂いが溢れる。聞いたことのない映画の鼓動が耳から離れない。「引き算」を採用し、しかし「マイナスの演出」に陥らない技を繰り出す演出は、モノクロの美しい画面に温もりを定着させる。ここでは身勝手さも我侭も愛敬に変換される。散りばめられた幸福な魔法に魅せられる。



8. ル・アーヴルの靴みがき “Le Havre”
 監督:アキ・カウリスマキ
 出演:アンドレ・ウィルム、カティ・オウティネン

 究極のリアリストであるカウリスマキが、華美という名の無駄を剥ぎ取った世界観を極める。貧困と隣り合わせの命は、涙も笑顔も見せることのないまま、毎日を淡々と生きる。言葉の少ない毎日を、辛いことなどないとシラッと生きる。彼らは声を荒げない。泣き喚かない。無用の笑顔も封印する。そして代わりに、僅かな言葉と動きを大切にする。その美観に胸打たれる。



9. アベンジャーズ “Marvel's The Avengers”
 監督:ジョス・ウェドン
 出演:ロバート・ダウニー・ジュニア、クリス・エヴァンス、マーク・ラファロ、クリス・ヘムズワース

 大胆な省略を武器に、それぞれの特異性に話の鍵を握らせる。行儀良さを放棄して、混沌を味方につける。オタク要素のある者による、ヒーローへの愛情溢れる演出は、ヒーロー同士の対決という歪さを、あぁ、何と魅力的に見せるのか。これ以上ない幸せなポジションを確保したマーヴェルコミックのヒーローたちを、フィル・コールソンと共に祝いたい。



10. 崖っぷちの男 “Man on a Ledge”
 監督:アスガー・レス
 出演:サム・ワーシントン、エリザベス・バンクス、ジェイミー・ベル、アンソニー・マッキー

 計画には穴がある。偶然に左右されている展開が目立つ。下準備の周到さは不自然だ。結局身体を張る方向に走るのも腑に落ちない。ところが、まさに崖っぷちで踏み止まる。ご都合主義を豪快と言い包める。気の抜けたところを愛嬌として見せる。B級を認め、それならばとサーヴィス精神旺盛に愉快な背負い投げを連発。バカにするよりも、その勢いに乗っかりたい。



次点. アルゴ “Argo”
 監督:ベン・アフレック
 出演:ベン・アフレック、ブライアン・クランストン、アラン・アーキン、ジョン・グッドマン

 大きな嘘の創り込みが念入りになされる。緻密な嘘の積み重ねにより生まれる真実も大切にされる。編集のリズムが快感を生む。緊張感がぐんぐん高まる。映画界を嘆きながら、しかしそれでも映画を愛することを謳い上げる。映画を愛する者にしか作ることのできない世界が出来上がる。ハリウッドがハリウッドであればこその芸術と娯楽。その融合に胸を打たれる。



未公開. 小悪魔はなぜモテる?! “Easy A”
 監督:ウィル・グラック
 出演:エマ・ストーン、ベン・バッジリー、アマンダ・バインズ

 「緋文字」のヘスター・プリンのように深刻な顔を通すヒロインではない。彼女はユーモアを武器に、学園に充満する愚かしい価値観を突破する。スタイリッシュな服で学園を闊歩し、自分を恥じてはいないと決して下を向くことがない。でも、実はジョン・ヒューズ映画のファンである、純情な女の子。「演技でもヴァージンを失うのってもっと特別なものかと思ってたわ」。観客は彼女に恋をする。



※アニメーション映画はベストに相応しい作品がなく、選定なし。



その他のBEST10選考作品
『ドラゴン・タトゥーの女』『メランコリア』『人生はビギナーズ』『ヤング≒アダルト』『ヒューゴの不思議な発明』『戦火の馬』『SHAME シェイム』『ブレイズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』『テイク・シェルター』『ファミリー・ツリー』『アメイジング・スパイダーマン』『アウェイクニング』『ハンガー・ゲーム』『007/スカイフォール』





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