キラー・スナイパー

キラー・スナイパー “Killer Joe”

監督:ウィリアム・フリードキン

出演:マシュー・マコノヒー、エミール・ハーシュ、
   ジュノー・テンプル、トーマス・ヘイデン・チャーチ、
   ジーナ・ガーション、スコット・A・マーティン、
   グラレン・ブライアント・バンクス、キャロル・サットン

評価:★★★★




 いきなりクズ人間だらけで嬉しくなる。トレーラーハウスのドアが開くと、真昼間から陰毛を丸出しにした女が現れる。卑猥な言葉がぽんぽん飛び交う。父と息子の会話はストリップ劇場でなされる。ドラッグに塗れ、アルコールの匂いが途切れず、裸が乱れ、暴力が溢れ出す。テキサスのクズな人間たちがクズな計画を立てる。青年は父親に持ちかける。母親を殺して、保険金5万ドルを頂こう。計画はあっさり動き出す。

 青年の立てた計画はしかし、スムーズには動かない。警官として働きながら、副業として殺し屋をしているジョー・クーパー=キラー・ジョーに「仕事」を依頼する。しかし、前金制だというのに、報酬が払えない。そこで青年は妹を担保としてキラー・ジョーに差し出す。ますますクズは極まる。僅かな計画の乱れが非常事態を生み、それがまた更なる窮地を作り出すという展開は、「ファーゴ」(96年)や「シンプル・プラン」(98年)を思わせるものの、そうした傑作に比べると、転がっていく雪だるまの速度は鈍いものだ。

 ただし、それがほとんど気にならない。キラー・ジョーの創り込みが優れているからだ。いかにもテキサス男らしいキメキメのスタイルなのが可笑しい。テンガロンハット、茶色のブーツ、派手なバックル、シャープなサングラス…。

 しかも演じているのは、テキサス臭濃厚なマシュー・マコノヒーだ。「フレイルティー 妄執」(01年)以来と言って良いかもしれないダークなキャラクターで、これが素晴らしくハマっている。能天気なだけの映画を腐るほど放出してきたマコノヒーだけれど、それは全てこの映画のためにあったのかもしれないと思わせるほど、ギャップの面白さでぐいぐい魅せる。冷たい目が活かされた、ふたつの変態場面が素晴らしい。

 青年の12歳の妹を目の前で着替えさせる場面。自分の部屋でワンピースに着替えようとする彼女に、目の前で着替えるように言う。靴下から脱げと指図するあたり、変態に年季が入っていると思ったら、その後は後ろを向いて直接的には見ない。目を閉じて着替えを想像するのだ。その後、彼女に後ろから抱きつかせ、自分のモノを握らせる。このときの目の痙攣!

 青年の父親とその後妻と一緒にフライドチキンを食べる場面。ある展開があり、血まみれになった後妻に向かって「フェラチオ」を強要する。ただし、しゃぶらせるのは股間に立てたチキンだ。それを実行する後妻の屈辱に塗れた姿を見て楽しむのかと思ったら、なんと本当にキラー・ジョーはそれで昇天するのだ。このときのイキ顔!

 キラー・ジョーの行為は残虐だ。しかし、どこか可笑しくもある。マコノヒーの起用が効いている。普通にしていても滲み出る、どこか抜けた空気が狂気と密着し、独創的なキラー・ジョーが立ち上がる。暴力的で、暗黒的で、悲劇的で、しかし可笑しい。ここにウィリアム・フリードキンらしさがある。クズだらけの中、キラー・ジョーが案外「聖人」的ポジションを獲得してしまうのも、計算通りだろう。

 切り上げ方には吹き出した。それぞれの思惑が明らかになり、ウィリアム・シェイクスピア劇のような絶望が立ち込める。そのとき妹の口から飛び出す、意外な言葉。そしてそれを耳にしたキラー・ジョーの表情。そこで終わるかと突っ込みを入れながら、でも実に『キラー・スナイパー』らしいと嬉しくなる。





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