クレイジー・ハート

クレイジー・ハート “Crazy Heart”

監督:スコット・クーパー

出演:ジェフ・ブリッジス、マギー・ギレンホール、ロバート・デュヴァル、
   コリン・ファレル、ライアン・ビンガム、ポール・ハーマン、
   トム・バウアー、ベス・グラント、ウィリアム・マークェス、
   リック・ダイアル、ジャック・ネイション

評価:★★★




 カントリーシンガー役に扮したジェフ・ブリッジスとコリン・ファレルがステージ上でデュエットする場面がある。観客はそれを大歓声で迎える。一見とても美しいシーンだ。しかし主人公にとっては、同時に酷く残酷なシーンでもある。観ているこちらも複雑な気分を抱くのだけれど、しかしそれでも結局、胸を打たれることになる。方程式のように単純には導き出すことのできない人生の不思議なところを突きつけられているようで。

 『クレイジー・ハート』には確かにカントリー版「レスラー」(08年)の趣はある。栄華を極めながら、今は落ちぶれてしまった中年カントリーシンガーの再生が描かれる。話の構成も似ているし、人物の配置も共通するところが多い。大体「レスラー」もそうなのだけれど、これは映画における定番のストーリーで、新味と呼べるものは見当たらない。どこかで見たような、感じたような作りに思えるのは、気のせいではない。それなのにやっぱり捨て難い魅力がある。

 どうしても無視できないのはブリッジスが体現する主人公バッド・ブレイクの佇まいだろう。口が悪い?本人は全然気にしていない。見苦しく腹が出ている?全くフォローできない事実だ。だらしがない?酒がイノチというタイプで常に酔っ払っているようだ。汚らしい?ステージ上で気分を悪くしてバック裏で吐くこともあるぐらいだ。しかしこれらの欠点が、おかしなことに魅力にも繋がっているのが面白い。ブレイクは今の自分の状況を重々承知していて、本当は引き受けたくないだろう仕事も受け入れている。しかし、ここが重要なのだけれど、彼は自分を哀れんではいない。不満はあっても、カントリーシンガーである自分へのプライドだけは常に持っていて、それに沿って行動している男だ。

 ブリッジスはこの人物像に真実味を与えている。カントリースタイルが笑ってしまうくらいに似合うのはもちろんのこと、目周りにブレイクが背負っている哀しみを漂わせ、その動きのイチイチに大らかで憎めないチャームを注ぎ込む。そして何と言っても声が素晴らしい。ブレイクが歌う楽曲は、昨今流行りのポップ要素がふんだんに盛り込まれたカントリーミュージックなんかではない。「どカントリー」と言っても良い実にカントリーらしいカントリーで、それにブリッジスの歌声が完璧にハマっている。それゆえにブレイクが生きた存在になる。

 いかにも映画的な大事件は起こらないし、捻りも全然ない。ただただ誠実に語られる物語に色をつけるのはマギー・ギレンホールだ。ブレイクを取材する記者に扮したギレンホールは、想像通りブリッジスと恋仲になる。ギレンホールは正統派の美人ではないものの、その所作がとても色っぽくてジッと見入ってしまうものを持っている。清潔感がありながら、適度に隙もあるのがイイ。ブリッジスとギレンホールの掛け合いには、スター映画の醍醐味がたっぷり感じられる。地味だけど。

 終幕、何年も楽曲作りから遠ざかっていたブリッジスが遂に新曲を作る。「The Weary Kind」と題されたこの楽曲がとにかく魅力的だ。歌うのがファレルであるところがニクイ。ファレルが歌うその姿、そしてそれを見つめるブリッジスの姿がジンワリ胸に沁みてくる(ファレルは儲け役。そして輝いている)。分かっていても、何か大切なものを思い出す。





blogram投票ボタン

ブログパーツ

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ