砂漠でサーモン・フィッシング

砂漠でサーモン・フィッシング “Salmon Fishing in the Yemen”

監督:ラッセ・ハルストレム

出演:ユアン・マクレガー、エミリー・ブラント、
   クリスティン・スコット=トーマス、アムール・ワケド、トム・マイソン、
   キャサリン・ステッドマン、レイチェル・スターリング

評価:★★




 『砂漠でサーモン・フィッシング』というタイトルがとても分かりやすい。イエメンの大金持ちが文字通り、砂漠に鮭を放流、そして釣りをしてみたいというのだ。富豪にはしっかりした思惑があるのだけれど、それでも絵空事と言うか、バカバカしいと言うか。でもそれをやってのける。テーマは「信心」。やりもせずに諦めるなんて、それこそバカだ!

 鮭を川に流すには、酸素の多い冷水とエサとなるハエが必要だ。どうやってその難題をクリアするのかと身を乗り出すものの、ものを言うのは結局金だったりする。何しろ予算として5,000万ポンドが何の躊躇いもなく出てくるのだ。専用のダムは既に完成済み、英国から鮭を運ぶのもお手の物。放流も大変スムーズに行われる。プロジェクトが動き出せばぽんぽんぽーん。

 これはもう「信心」こそがテーマゆえなのだろう。頑張ることこそ重要で、その手段には興味が払われない。ひょっとしたら結果すら大きな意味を持たないかもしれない。したがってこの映画、砂漠で鮭を釣り上げるまでに尽くされる、人間の英知には大変素っ気無い。

 この題材ならば切り口は豊富なはずだ。文化と文化の衝突は避けられないし、宗教問題も深く横たわる。英国政府の打算はクローズアップされるものの、イメージアップのためだけに動く漫画になっている。皮肉や風刺性は大変希薄。勿体無い。

 代わりに注目されるのは恋愛になる。プロジェクトに協力する水産物の専門家の男がクソマジメで、コンサルタントの女が上手に彼を操る感じが、テンポ良く描かれる。男が物事を理論で突破しようとすると、女がウィットで切り返す。女が優位に立って転がっていく関係に快感がある。女が時々弱さを見せるのもお約束。ロマンティック・コメディの基本だ。ユアン・マクレガーとエミリー・ブラントが醸し出す化学反応も愉快。ナイスなカップルと言える。

 ところが、中盤に差し掛かると、ここに感傷がぶつけられるのは大いに不満だ。「寓話」だと割り切った見せ方になっていたところに、突然「現実」が放り投げられる。作り手としてはドラマティックに盛り上げようとしたのだろうけれど、リズムが一気に崩れ去る。それに同調するように、鮭プロジェクトも足場が水に侵されていく。もはや砂漠は底のない沼地だ。ラッセ・ハルストレムは最近、こうやって話を水浸しにしてしまうことが多い。悲嘆の涙に暮れることを感動だと、胸を打つものだと勘違いしている。

 ただし、クリスティン・スコット=トーマスが出てくる場面はその限りではない。政府広報を演じるスコット=トーマスは、出てくる度に人間扇風機となって水をあっさり吹き飛ばす。カラッとスパッと全て効率的に…が演技に出ているのが気持ち良い。彼女を主人公に置いた方が題材が生きたのではないか。





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