ハッピーニート おちこぼれ兄弟の小さな奇跡

ハッピーニート おちこぼれ兄弟の小さな奇跡 “Jeff, Who Lives at Home”

監督:ジェイ・デュプラス、マーク・デュプラス

出演:ジェイソン・シーゲル、エド・ヘルムズ、
   スーザン・サランドン、ジュディ・グリア、レイ・ドーン・チョン、
   スティーヴ・ジッシス、エヴァン・ロス

評価:★★★




 M・ナイト・シャマラン監督の「サイン」(02年)は積極的にバカにしていたクチだ。ある家族の周りで起こる謎めいた出来事の数々が、宇宙からの未知の生物の襲来と無理矢理絡められ、気が付けば作品自体が雁字搦めになっていた…という珍品。『ハッピーニート おちこぼれ兄弟の小さな奇跡』は「サイン」を解体し、一から組み立てたような映画だ。ひょっとすると「サイン」へオマージュを捧げるつもりで始動した企画なのかもしれない。けれど、思いがけず独特の視点が構築されている。寂しくて、温かい。

 引きこもり男の元にある間違い電話がかかってくる。電話の主は「ケヴィンを出せ」と言う。しかし、そこにケヴィンはいない。母からの電話で木工用ボンドを買いに行くことになった男は、バスでケヴィンと書かれたユニフォームを着た青年に出会い、これは「啓示(サイン)」だと後をつけることにする。…とこれはもう、完全に喜劇向きの導入部だ。思い込みの激しい男の珍道中にするのにうってつけ。しかし、その愚かさをバカするようなマネはなされない。

 男は珍道中の途中で兄と再会する。久しく顔も合わせていなかったふたりが行動を共にする。弟が人生を深く考え過ぎているとするなら、兄はその逆、あまりに自分本位に生きている。それゆえ彼らは身動きがし辛い毎日だ。当然家族関係も停滞している。作り手はきつく結ばれてどうにもならないと思われる人生の紐を解く手助けをする。「啓示」を散りばめ、彼らに無理をさせ、向き合っていなかった問題に直面させ、怒らせ、悩ませ、涙させ、しかし、気づけばほら、紐に余裕ができているではないか。押しつけがましさがないのが良い。ふたりの息子を持て余している母親の物語も奇妙に合体する。

 作り手はカメラと共に兄弟や母親の近くにいる。突然登場人物に近寄ったり、視線が揺れたり…彼らと一緒に呼吸している印象だ。これが物語のリズムと心地良い同調を見せている。個人的な物語でありながら、普遍性を感じさせる。行き詰った人生を感じている人はたくさんいる。

 配役が見事だ。だぼだぼのパーカーとハーフパンツというスタイルが似合い過ぎの弟ジェイソン・シーゲル。空虚なるカッコつけスタイルで苦笑を誘う兄エド・ヘルムズ。生温い方向に向かいそうになると彼らのケミストリーが気持ち良く炸裂する。母を演じるスーザン・サランドンは久しぶりに「女」を感じさせる役柄。歳を重ねた分傷つきやすくもある女心をスマートに魅せる。

 ヘルムズとシーゲルがバスタブに腰を下ろして語る場面のヴィジュアルが心に残る。大の大人が子どもみたいな体勢で大真面目に人生を語る。身につまされるその可笑しさよ。サランドンが火災報知機による水で打たれる場面も印象深い。全てを洗い流すようなサランドンが美しい。

 啓示が人を動かす。しかし、動いた先にあるものの価値を認めるのは自分自身でしかない。「啓示」に寄り掛からない苦味が甘味と一緒くたになっている。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ