ザ・レッジ 12時の死刑台

ザ・レッジ 12時の死刑台 “The Ledge”

監督:マシュー・チャップマン

出演:チャーリー・ハナム、リヴ・タイラー、パトリック・ウィルソン、
   テレンス・ハワード、クリストファー・ゴラム、ジャクリーヌ・フレミング

評価:★★




 高層ビルの屋上から青年が飛び降りようとしている。身を投げ出せば、即死は確実だ。思わずサム・ワーシントン主演作「崖っぷちの男」(12年)を思い出す。果たして、彼には何があったのだろう。駆けつける警官が事情を問いただす。正午に飛び降りると覚悟を決めた青年は、ゆっくり顛末を語り出す。

 『ザ・レッジ 12時の死刑台』はこんな思わせぶりな出足を見せながら、「飛び降り」自体にはさほど意味がない。青年にとっては死ぬことが重要で、死ねるのであれば飛び降りでも首吊りでも薬物過剰摂取でも構わないだろう。「飛び降り」は映画の画として派手さがあるという理由で選ばれたのに違いない。

 中盤の見せ場は独り身のチャーリー・ハナムと夫のいるリヴ・タイラーのラヴシーンになるだろう。ハナムは相変わらず美しい顔を隠しての役作り。客商売であるホテルの副支配人なのに良いのかということはさておき、ちょっとヒース・レジャーを思わせるところがあるのにドキッとする。タイラーはと言うと、不幸な境遇というのがピッタリで、恐れずに言うならば虐げられる魅力を具えている。攻めるハナムをタイラーが静かに受け止める。おとなしいタイプほど火がつくと一気に行くものだけれど、タイラーはまさにこのタイプ。上品にハナムを求めるときの唇がいやらしい。

 ふたりの情事はもちろん夫にバレる。そして熱心なカトリック信者である彼が暴走を始める。演じるパトリック・ウィルソンは最初から怪しい。同性愛嫌悪を露にすることだけでなく、いかにも怪しい目つきだ。タイラーはウィルソンの束縛により雁字搦めになっている…ということはよく分かっても、予測通りの展開以上のものはない。

 …とここではっきり分かるのは、何のことはない、この映画は妻が浮気し、夫が理性を失い、浮気相手を追い詰める…という実に下世話な話だということだ。飛び降り直前シーンから始まり、果たして彼は飛び降りるだろうか、彼を助けるためにはどうしたら良いだろうか…という謎で引っ張るものの、終わってみれば浮気騒動以上のものは浮かび上がらない。タイラーとハナムの浮気を正当化するのは、ウィルソンの異常性。そこに宗教問題が注がれる。

 おそらく三人の関係に「今のアメリカ」を投影させているつもりなのだろう。テロリズムの驚異が格段に高まるアメリカは、いつどんなことで脅威に晒されるか分からない。一見常識的でも、その内に秘める暴力性が、いつ顔を見せるかは誰にも分からない。分かったような、分からないような。独り善がりの解釈が見え隠れ。

 結末が酷い。おそらく警官役にテレンス・ハワードを置いたがゆえの流れだ。彼が「人生は続く」ことを悟り、抱えている問題に折り合いをつけるためには、これが良いと判断したのかもしれない。もちろん大きな間違いだ。後には不快さしか残らない。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ