恋のロンドン狂騒曲

恋のロンドン狂騒曲 “You Will Meet a Tall Dark Stranger”

監督:ウッディ・アレン

出演:ジョシュ・ブローリン、ナオミ・ワッツ、アンソニー・ホプキンス、
   ジェマ・ジョーンズ、アントニオ・バンデラス、フリーダ・ピント、
   ルーシー・パンチ、ポーリーン・コリンズ、アンナ・フリエル、
   ロジャー・アシュトン=グリフィス、ユエン・ブレンナー

評価:★★★




 この頃ウッディ・アレン映画を観ると「こつこつ野球」なんて言葉を思い浮かべる。アレンは毎年一回必ず打席に立つ。力のある打者は数年に一回、ホームランを狙って思い切り振ってくる。アレンはしかし、最初からホームランなんて興味がないみたいだ。代わりに彼はセンター前ヒットを狙う。力まず無理せず気持ち良く、真正面に返すだけ。返すだけでもしっかり塁に出る。運悪くゴロになっても内野安打が狙える微妙なところに転がす。「ミッドナイト・イン・パリ」(11年)だってホームランというより、思いがけずフェンス直撃のスリーベースヒットになった感じだ。『恋のロンドン狂騒曲』もセンター前ヒットだ。いつもの調子のアレンが、肩の力を抜いてヒットで出塁、ニヤニヤしている。

 物語はウィリアム・シェイクスピアの言葉から始まる。人生なんて剣幕ばかりのから騒ぎ。意味など何ひとつない。どうやらこれはアレンの人生観でもあるようで、その通り、ここには他愛ない恋のすったもんだが、我が恋の花こそいちばん美しいと咲き乱れる。いちばん美しいなんて思っているのは、当人だけというのがミソ。

 もちろんアレンは勘違いの方向に向かって乱れる恋の花を徹底的に笑いのめす。いい歳こいた大人たちが、人生に右往左往する様。大抵の映画人はそこに救いの手を差し伸べるわけだけれど、アレンはそうする代わりに、その恋の顛末に茶々を入れる。野次を飛ばす。

 ロンドンに住む二組の夫婦を中心に語られる物語。四人がいずれも別の異性に恋をして道を外れ、いつしか愚かの森へと迷い込んでいく。それぞれに滑稽だけれど、中でもアンソニー・ホプキンスのエピソードには笑う。中年の危機ならぬ、老年の危機。死を身近に感じ始めた彼は40年連れ添った妻と別れ、身体を鍛え始め、若者たちと遊びに出かけ、終いには娼婦の虜となる。ホプキンスがいつになく生き生きした表情や軽やかな立ち振る舞いを見せる。でも肝心なときはバイアグラに頼っちゃう!

 四つの恋の結末はいずれもビターだ。その内三人は人生が更なる暗礁に乗り上げる。しかし、一人は…ある意味、最高のハッピーエンド。こんなところにもアレンの人生観が見える。万事、物事を深く考え過ぎない者が幸せ。

 アレン映画の役者は皆、楽しそうだ。気張っている者はどこにもいない。捻りの効いたセリフの応酬で、充実の表情を浮かべている。アレンはそのアンサンブルの中に、野次馬カメラとして潜り込んでいる。度々長回しが使われる。カメラの動きがアレンのそれに見えて仕方がない。

 やっぱりアレンは茶番に寛容だ。恋のエネルギーを知る者は、それが妙な方向に転がっても慌てない。一歩引いて観察する技が素晴らしい。





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