人生の特等席

人生の特等席 “Trouble with the Curve”

監督:ロバート・ロレンツ

出演:クリント・イーストウッド、エイミー・アダムス、
   ジャスティン・ティンバーレイク、ジョン・グッドマン、
   ロバート・パトリック、マシュー・リラード、ジョー・マッシンギル、
   ボブ・ガントン、スコット・イーストウッド

評価:★★★




 監督のロバート・ロレンツはクリント・イーストウッドと長年一緒に仕事をしてきた人物なのだという。イーストウッドの数少ない失敗作「マディソン郡の橋」(95年)以来、助監督やプロデューサーとして彼をサポートし続けてきたとのこと。…となると、イーストウッドの技がロレンツにどう継承されているのか、どうしても気になる。

 さほどイーストウッド映画の匂いは感じられないというのが、結論だ。語りのペースは乱れ気味だ。省略術に冴えは見られない。伏線の張り方はスマートさから程遠い。音楽の流し方はベタと言って良い。独特の変態的な感性は、明らかにされる父と娘の別離の真相に見られるぐらいだ。でも、つまらなくはない。フィールグッドムービーとしてジューシーな肉汁をたっぷり含んでいる。

 アメリカ映画らしい親と子の物語だ。互いを想い合ってはいるものの、その距離は適切とは言えないふたり。娘が6歳のときに母が死に、それ以来ぎくしゃくした関係が続いている。それが娘が父の野球のスカウトの仕事を手伝うことをきっかけに変化を見せる。予想外の展開を見せることはない。しかし、親と子の間に流れる僅かな磁力が見逃されることもない。ノースカロライナの飾りのない田舎風景の中で、磁力が強まったり弱まったり…。

 磁力の強弱を気まぐれに動かすのが「野球」であることは言うまでもない。プレイではなく、スカウトというのが渋い。幼い頃から父と行動を共にしてきた娘は、いつの間にか父と同じように野球を見る目を培っていた。離れてしまった人生の道がそれにより慎ましく揺さぶられる。野球は一球毎に休む瞬間があるスポーツで、そのリズムがまるでふたりの鼓動のようだ。映画と野球の相性は素晴らしく良い。『人生の特等席』なんて、やや甘ったるい邦題がつけられたのも、なるほど分からないではない。

 そして結局、注目すべきは役者だろう。80歳を超えてなお、イーストウッドはカッコイイ。顔はますますしわくちゃだし、肌は弛んでいるし、腰回りはだぶついている。それでも背筋は、天に向かってすらっと伸びている。特に後ろ姿が素晴らしい。高い腰と広い背中。背負っているものに重みを感じさせる。「パソコンは野球を知らないやつがやるものだ」。「医者なんて右も左も分からない」。頑固そのものなしゃがれ声が可笑しい。鋭い眼光や突然の素早い動きも楽しい。敬意を込めて「霊長類最強のジジイ」とお呼びしたい。

 しかし実のところ、ジジイよりも感心させられるのはエイミー・アダムスだ。イーストウッドの娘の多面的な人物像を実に塩梅を心得た演技により魅せる。イーストウッドと並んでも引き過ぎず、かと言って画面の外に押し出してしまうような力勝負にも走らない。頑固ジジイの血を確かに感じさせながら、親子の絆を気持ち良く空気の中に放出している。恋のアプローチをかけてくるジャスティン・ティンバーレイクを軽くあしらう画も愉快だ。

 ドラフトの行方をも含めた結末の流れはご都合主義と言われかねない。ティンバーレイク演じる若手スカウトマンの動かし方は幼い。けれど、それが何だというのだろう。ここではフィールグッドムービーで大切なハートがぞんざいには扱われない。「クリント・イーストウッド映画」ではないものの、優しい「ロバート・ロレンツ映画」としてささやかに輝いているではないか。





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