危険なメソッド

危険なメソッド “A Dangerous Method”

監督:デヴィッド・クローネンバーグ

出演:キーラ・ナイトレイ、マイケル・ファスベンダー、ヴィゴ・モーテンセン、
   ヴァンサン・カッセル、サラ・ガドン、アンドレ・ヘンニック、
   アルンドゥト・シュヴェリング=ゾーンレイ、ミニヨン・ルメ

評価:★★




 デヴィッド・クローネンバーグがカール・ユングとジークムント・フロイトを取り上げる。一見意外だ。精神分析を語る上で避けては通れないふたりの大家。変態的暴力性を凝視してきたクローネンバーグは、畑違いではないのか。ユングとフロイトの知性がクローネンバーグの味を呑み込んでしまうのではないか。

 『危険なメソッド』におけるそうした不安は杞憂に終わる。ユングとフロイトの出会いと別れ、互いに与え合う影響の物語を借りながら、クローネンバーグが見つめるのは、彼らの身体の中で静かに妖しく蠢くものであるからだ。それを内なる暴力性と呼ぶのは容易いものの、クローネンバーグはそうした一面的な見方は嫌うのではないかと察する。理論だけでは突破できない人間の複雑怪奇な心を密着させることで、その正体を探る。

 均整の取れた画面が目に焼きつく。澄み渡った空気の中に見える景色。柔らかな光。塵の見えない部屋。品を湛えた家具や食器。繊細に流れるペン。カメラワークは左右対称とは行かないまでも、規律を守ったそれが選ばれている。クローネンバーグは対象物に近づく。そして、その裏にある狂気を絡めとる。美しくて、でもそれが歪みを引き出していく。

 特に衣装にはその匂いが濃い。ユングが着るスーツは、その素材の柔らかさと温かさが感じられるもの。演じるマイケル・ファスベンダーの綺麗な所作との相性も良い。歪みが際立つ。妻から贈られたヨットの中で、ユングが患者である女性と横たわるショットも、同様に歪み方が強い印象を残す。

 ファスベンダーとフロイト役のヴィゴ・モーテンセンは、そうしたクローネンバーグの狙いを理解した役作りを見せている。彼らが親密になっていくまで。ズレが見える瞬間。溝が広がる過程。訣別が決定的になるとき。…言葉と動きを駆使しながら、「歴史」と「人間」を浮上させる。

 その一方、キーラ・ナイトレイには首を傾げる。あることが原因で唐突なヒステリー状態になるフロイトの患者役。相当に思い切った熱演を見せるも、独特の世界観の中で完全に浮き上がる。目を血走らせ、口を歪めながら突き出し、手足をあらぬ方向に捻り、奇声を上げ…さながら一人「エクソシスト」。しかも、症状が落ち着いてからも、このテンションを維持している。暴力性と並ぶ大きなテーマである性的衝動を担う役柄であり、ユングとフロイトを結びつける接着剤的な役柄であり、談話療法の意義を見せる役柄であるというのに、この浮き上がり方はどうしたことか。クローネンバーグがどうしてこれを許したのかが、最も大きな謎として残る。





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