ビッグ・ピクチャー

ビッグ・ピクチャー “L'homme qui voulait vivre sa vie”

監督:エリック・ラルティゴー

出演:ロマン・デュリス、マリナ・フォイス、ニエル・アレストリュプ、
   エリック・リュフ、ブランカ・カティッチ、カトリーヌ・ドヌーヴ

評価:★★★




 フランス映画『ビッグ・ピクチャー』はアメリカ人作家ダグラス・ケネディの小説を基にしているという。なるほどあまりフランスらしさは感じない。通俗的な匂いが濃厚に立ち込めている。「運命の女」(02年)と「リプリー」(99年)をミックスしたような物語。物質的に満ち足りた生活を送りながらどこか虚しさを感じている男が、妻の浮気相手を殺害。彼の人生を乗っ取って、長年の夢だった写真家として人生の再スタートを切る。尤も、ここにはダイアン・レインのようなセクシーな妻はいないし、ジュード・ロウのように羨ましい美貌の男も出てこない。

 代わりにロマン・デュリスがいる。相変わらずハンサムな顔を隠すような役作り。特に手入れがされているようには見えない髭。寂しげな眼差し。軽やかな身のこなし。アート臭の強い佇まいから醸し出される翳りこそが、最高の武器だ。デュリスならばいくらでもやり直せるだろうと思わせながら、その陰影が妙に心に引っ掛かる。キャスティングは成功している。

 カメラはデュリスの心模様を映し出すような寂寥感溢れる風景を映し出す。部屋の内装も都会の街並も美しいのに、もの哀しい。緑の木々と青い海に囲まれた田舎も、綺麗で情緒があり、でも何かが足りない。目に見えているものの裏側で、ゴーゴーと嵐が吹き荒れている。泣き叫んでいる。草臥れ方に芸があるデュリスが入り込むことで、画面が完成される。

 中盤のポイントはデュリスが妻の浮気相手のアイデンティティーを乗っ取る件になる。偶然の殺人。死体の処理。自らの死の偽装。パスポートの書き換え。遠くへの逃避行。「リプリー」の時代ならともかく、情報管理社会の先進国でこんなことが可能なのだろうか。…なんて疑問を抜きにしても、デュリスの変身があっさり済まされるのは惜しい。もっとドラマティックに盛り上げても良かった。ありきたりに思える。話の展開はいかにも小説を原作にした映画なのだから。

 主人公は夢だった写真家として第二の人生を始める。作品が新聞社の目に留まり、才能を認められる。個展も開かれる。しかし今度は「成功」が、彼を苦しめることになる。人生の難しさ、生きる苦しみが浮上する。小説的でご都合主義。それでも画面の寂しさは手応えとして得られる。主人公がまた別の土地へ逃げようとする件には、その唐突さに笑ってしまうけれど…。なんだか一頃流行ったシドニー・シェルダン的な激しい起伏と言える。

 原作が人気なのだろうか。カトリーヌ・ドヌーヴ、ニエル・アレストリュプといった大御所まで顔を見せている。彼らが演じる必要がある役柄かどうかは別にして、確かにその存在が通俗的ストーリーを引き締めている。デュリスのような本物の脇を支えるにはこのクラスが出てくる必要があるのかもしれない。特にデュリスとアレストリュプの掛け合いは、僅かなものでありながら奇妙に心に残るものだった。





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