わたしたちの宣戦布告

わたしたちの宣戦布告 “La guerre est déclarée”

監督・出演:ヴァレリー・ドンゼッリ

出演:ジェレミー・エルカイム、ブリジット・シィ、エリナ・レーヴェンソン、
   ミシェール・モレティ、フィリップ・ロダンバッシュ、アンヌ・ル・ニ、
   バスティアン・ブイヨン、フレデリック・ピエロ

評価:★★




 またしてもフランスから、ちょいと警戒心の働く映画がやってきた。全身麻痺の初老の男を取り上げた「最強のふたり」(11年)に続き、脳腫瘍に侵された赤ん坊を扱った『わたしたちの宣戦布告』だ。この二本は一見、アプローチ法が似ている。しくしくめそめそ泣きべそをかくのを極端に嫌い、明るく努めた演出を選んでいる。ところが「最強のふたり」には感心し、『わたしたちの宣戦布告』には感心しなかった。なぜか。

 「最強のふたり」が障害者と介護人の関係を綴る人情話に昇華されていたのに対し、こちらは息子の難病に両親がいかにして立ち向かっていったかを描いた、所謂難病記録の域を超えられていない。両親の馴れ初めから始まり、子どもがアッという間に誕生。発病とそれに全力で向き合う姿勢が詳細に語られていく。

 語られていくと言うか、ここにはそれしかないと言い換えても良い。不可解な症状の発見。絶望に打ちのめされる瞬間。手を差し伸べる家族や友人。検査のいちいち。医師による真摯な説明。両親がそれらの全てを受け入れ受け止め、そして立ち向かう。立派だけれど、ここには生活感と呼べるものがない。たとえ全てを犠牲にしても、それでも生きている。それにまとわりつく生活感。驚くほどそれが実感されない。

 演出は深刻さを避ける。そんなものは病気に向かい合うときの力なんかにはならない。それならばと本来あるはずの苦悩の場面はほとんどがカットされる。代わりに挿入されるのは「遊び」だ。両親や息子の名前。御伽噺風のナレーション。陽気なバックミュージック。走るカメラ。羽目をハズすパーティ。突然のミュージカル。身悶えるショットはアパッシュダンスのエッセンスが注がれる。そのエネルギッシュな疾走に共感を覚えつつ、強さの原動力になっているものが安易なところに落とし込まれているようで、不安な気分を覚える。

 おそらく生きる希望だとか人生賛歌だとかポジティヴな人生観を浮かび上がらせたかったのだろう。事実、彼らの姿勢は極めて逞しい。ところが、最も大きな顔をして浮上するのは、自画自賛の叫びだ。俺たちはこんなにも踏ん張った。私たちは苦境を耐え抜いた。病気なんかには決して負けない。目を背けることなく息子と一緒に立ち向かった。そんな自分を誇らしく思う。あぁ、人生って美しい!

 暑苦しいと感じるのは薄情なのだろうか。ただ、主演女優ヴァレリー・ドンゼッリと主演男優ジェレミー・エルカイムの実話を基にしていたり、しかもふたりが共同で脚本を手掛けていたり、さらにはドンゼッリが監督にまで手を出していたり、駄目押しでふたりの本当の息子が姿を見せていたり…なんてことを知ると、やっぱり自我自賛の匂いは間違いではなかったと感じる。

 おそらく作り手と題材の距離が近過ぎるのだろう。死ぬほど苦しんだ体験がベースにあるがゆえに思い入れが過剰に強くなり、物語のバランスが巧く取れていない。人間の強さの主張が前面に出て、それと表裏一体の弱さが姿を消す。しかし、強さだけでは本物ではない。狙いは分かっても、微妙なところで足を踏み外す。





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