キック・オーバー

キック・オーバー “How I Spent My Summer Vacation”

監督:エイドリアン・グランバーグ

出演:メル・ギブソン、ケヴィン・ヘルナンデス、ドロレス・エレディア、
   ピーター・ストーメア、ピーター・ゲレッティ、ロベルト・ソサ、
   マリオ・サラゴサ、ヘラルド・タラセナ、ディーン・ノリス

評価:★★★




 メキシコの「小さな町」で、久しぶりにメル・ギブソンが楽しそうだ。ピエロになるわ、タバコで耳栓するわ、クリント・イーストウッドのモノマネをするわ、子どもに言い負かされるわ、男にも女にも殴られるわ…。終幕ある場面で、傘を差す姿には大笑い。不意に「マーヴェリック」(94年)の頃のギブソンを思い出す。脚本にもタッチしているようで、ちょいと感心もしたり…。

 脚本と言えば、オープニングでは汚職警官とカーチェイスしながら、ピエロ姿のギブソンがナレーションでこう語るのだ。「哀しいピエロは最低だ。俺の金に血を吐くピエロはもっと最低だ」。続くのは「母は言っていた。“負け犬は死ね”」。思わず身を乗り出さずにはいられない。ギブソンの茶目っ気を眺められたのは、何時以来だろう。

 ギブソンに乗せられるように、演出も遊んでいる。黄色を基調にした画面作り。アクション場面での容赦ない暴力。銃撃戦ではスローモーションが入り、血飛沫が美しく、そして派手に散っていく。緊迫感のある場面で、突然フザけた笑いが投入されるのも、嬉しいところだ。正しくB級と言える。

 しかし、最大の遊びは、ギブソンがぶち込まれる凶悪犯だらけの刑務所だろう。上から監視はされているものの、そこはほとんど「小さな町」だ。力のある者により支配されたその町では、金や愛が安っぽく自由に飛び交っている。屋台も出ているし、スポーツも行われる。ギブソンはそこで余裕たっぷりサヴァイヴァル。「プリズン・ブレイク」(05年~09年)と比べると過酷ではない。でも「プリズン・ブレイク」よりおかしみが漂っている。無秩序。何でもあり。それをユーモラスに描き出す。まあ、人が死に過ぎるのはどうかと思うけれど。

 ギブソンはこの町で10歳の少年と出会う。盗んだ金が第一だった男が、子どもとその母に絆される…という甘ったるさがないのが有難い。少年が「クソガキ」と呼ぶに相応しいしたたかさを見せるからだ。少年は悪漢に肝臓を狙われる希望であり、同時にファイターだ。ギブソンは少年を大人と同じように扱う。それに違和感がない。尤も、腹を裂かれてしまうのはさすがに気の毒。

 『キック・オーバー』の勝因は大作を目指さなかったところにあると思う。無理矢理スケールを大きくするのではなく、こじんまりしても「タイトに」「素早く」を心がけたのが吉と出た。ギブソン主演という点を考えると、少々寂しい気もする。けれど、変なプライドは捨ててB級映画で活き良く動く、ギブソンにかえって好感を持つ。





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