ロビイストの陰謀

ロビイストの陰謀 “Casino Jack”

監督:ジョージ・ヒッケンルーパー

出演:ケヴィン・スペイシー、バリー・ペッパー、ケリー・プレストン、
   ジョン・ロヴィッツ、ラシェル・ルフェーブル

評価:★★




 今更断わるまでもなく、ケヴィン・スペイシーは唯一無二の素晴らしい俳優だ。粘着質な演技が極めて広く深い振り幅を見せる。ロビイスト役のこの映画でも、演技だけで感嘆してしまう場面が何箇所もある。歯磨きやうがいをしながらの独白場面。口をほとんど開かないままに激昂する場面。派手な身振り手振りを交えた映画の脚本の売り込み場面。利己的で傲慢、自分の利益優先のままに生きる男の本性をアッという間に伝えてしまう。

 『ロビイストの陰謀』はスペイシー演じる実在の人物、ジャック・エイブラモフの悪事を暴き出す。アメリカではかなり有名な人物で、彼がしでかした犯罪は、ウォーターゲート事件と並ぶと言われたりロビイスト界のエンロン事件と称されたりしている。もちろん金絡み。口の達者さを利用して共和党に取り入り、議会を思い通りに操作。カジノ絡みの犯罪行為にも手を出し、大金を動かしたという。映画でも犯罪部分がメインになっているのだけれど、これが非常に分かり難い。事件に近寄り過ぎているのか、犯罪の流れというのが見え辛く、登場人物が何をしているのかは理解できても、全体像がぼやけたままだ。せめて金の流れだけでも俯瞰で捉えて欲しかったところだ。

 しかし、それよりも問題なのは、悪事の羅列が不愉快さしか生まないところだろう。善良なところが全く見られない主人公は、自分がこの世の王とばかりに人を人と思わない言動を繰り返す。笑顔を浮かべながら、しかし心の中では相手をバカにし、その通り自分の思い通りに事を運んでいく。大胆不敵な綱渡りのサスペンスがあるべきところに、不快さが充満する。

 そうなってしまったのは、エイブラモフの一面的な描き方に原因がある。彼は最初から憎々しい。そして、一向にそのイメージが崩れない。妻や子どもたちと一緒の場面で情を見せるかと思いきやそれもなく、いつでも王様の態度だ。最初から彼を嫌いになる。嫌いになったまま、感情の揺さぶりはすっかり忘れられる。スペイシーの巧さがダメ押しになる。憎々しい。不愉快だ。でもだから、何なんだ。

 そういう気持ちだから彼が堕ちていく過程にはある種のカタルシスが存在する。自業自得。因果応報。遂に報いを受けるときが来たのだろう。ホッとすると言うか、すっきりすると言うか。でも他者のそういう姿を眺めて喜びを感じるというのも、もやもやを残すものだろう。わざわざ最後に観る者の気分を宙ぶらりんにしてしまう。趣味が良いとは言えない。

 「凡庸という名の病を理解している者は、何か行動を起こす」というセリフがある。怪物の誕生を予感させるそれだ。そして実際、エイブラモフは怪物だったのだろう。しかし、ここにいるのは怪物ではなく、浅はかなだけのタコ男だ。家族関係やユダヤ教、映画好きといった注目要素は見え隠れする。もっとユニークな角度から斬り込めた題材だと思う。





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