ソハの地下水道

ソハの地下水道 “In Darkness”

監督:アニエスカ・ホランド

出演:ロベルト・ヴィエツキェヴィチ、ベンノ・フユルマン、
   アニエスカ・グロホウスカ、マリア・シュラーダ、
   ヘルバート・クナウプ、キンガ・プレイス

評価:★★★




 さすがにネタが尽きただろう…なんて思うのは大間違い。またしてもホロコーストが取り上げられる。今度は1943年のポーランドが舞台。ユダヤ人狩りから逃れ、14か月もの間を地下の下水道で過ごした者たちの、実話をベースに描かれる。…と言っても、主人公は彼らではない。下水修理工を生業としているレオポルド・ソハという名の男がユダヤ人を匿う話だ。

 ただし、『ソハの地下水道』は英雄話なんかではない。ソハは小悪党と言っても良い人物で、「副業」としての空き巣により小銭を稼いでいる。空き巣中に見つかれば、暴力も厭わない。ユダヤ人を匿うことになるのも、打算を働かせたがゆえ。ナチスに売るよりも稼げると、命のかかった彼らから金を毟り取る。シラミどもめ…と言い放ちながら…。

 小悪党は小悪党のままだ。アニエスカ・ホランドは「シンドラーのリスト」(93年)でスティーヴン・スピルバーグが犯したミスを繰り返さない。ソハは突然善人に変わることなどないままに、ユダヤ人と持ちつ持たれつの関係を続ける。その彼がいつしか、彼らを救いたいという気持ちに駆られる。やめておけという心の声とは裏腹に危険を冒して手を差し伸べる。なぜか。それは目の前に彼らがいるからだ。極めて単純な答えを、押しつけがましくなく、さらりと描いたのが最大の手柄だ。

 ソハがしたたかな男なら、ユダヤ人側も実に人間臭い行動を見せる。下水は臭いから嫌だと脱走する者あり。人がひしめき合う中でセックスする者あり。金品を失敬して自分だけ助かろうとする者あり。妊娠を隠して迷惑をかける者あり。ホランドはこれを、生命力に結びつける。笑いに変換されることもある。ソハと渡り合うエネルギーに変えるのだ。それがホロコーストの時代だ。

 ナチスに見つかるかもしれないというユダヤ人のサスペンスと、彼らへの援助がばれるかもしれないというソハのサスペンスが巧みに交錯する。彼らは皆、崩落寸前の吊り橋を渡っているようなものだ。途中、ある人物を捜すため、ひとりのユダヤ人が収容所に潜り込むエピソードが出てくるのが面白い。闇に閉じ込められたままの生活の息抜き効果もある。もっと突っ込んだ描写を入れても良かっただろう。

 145分という長い映画にも関わらず、そして画面の大半が闇に包まれているにも関わらず、不思議と退屈しないのは、ホランドの演出がまとまっているからだ。冒頭、「仕事」を終えたソハが妻のベッドに潜り込みセックスに興じるまでの数分間で、ソハという人物を説明してしまう無駄のなさ。地上と地下を切り替えるタイミングの上手さ。奥行きが意識され、手前だけでなく後方でもドラマが起こる画面設計。子どもに頼ることないままにかけられる感情の揺さぶり。あとはどれぐらい地下に潜っているのか、現在地下のどの地点にいるのか、時間と場所の問題さえクリアできていれば、ほとんど文句はない。





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