ロック・オブ・エイジズ

ロック・オブ・エイジズ “Rock of Ages”

監督:アダム・シャンクマン

出演:ディエゴ・ボネータ、ジュリアン・ハフ、トム・クルーズ、
   キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ポール・ジャマッティ、
   マリン・アッカーマン、アレック・ボールドウィン、ラッセル・ブランド、
   メアリー・J・ブライジ、ブライアン・クランストン

評価:★




 田舎から都会に出てきた若者がスターになることを夢見る…という使い古されてボロ雑巾のようになった筋書きから「コヨーテ・アグリー」(00年)、或いは「バーレスク」(10年)を思い出す。いつの時代も夢は人の心を捉まえるのに手っ取り早いのだ。しかし、物語が進めば進むほど、同じ系統の作品と括って良いのか、首を傾げずにはいられない。これは正統派ミュージカルなんかではないのではないか。一緒に語るべきは「オースティン・パワーズ」(97年)なのではないか。『ロック・オブ・エイジズ』はそう、正真正銘、バカ映画だ。

 そもそも80年代ロサンゼルスのミュージックシーンをロックで描き出すというコンセプトからしてバカの匂いが漂う。ただし、この匂いは楽しいバカになる可能性は秘めていたはずなのだ。美術や衣装でノスタルジーを刺激し、名曲の洪水でアドレナリンを煽る。洗練された今の技(例えばマッシュアップ)を使って、新風を吹かせられるかもしれない。

 いちばん大きなミスは、80年代の再現が上手く行き過ぎてしまったことにあるのではないか。60年代、70年代とは明らかに違う80年代の空気。MTVの台頭がロックミュージックの真髄までも軽薄に飾り立てるとき。デフ・レパード、ボン・ジョヴィ、ガンズ・アンド・ローゼスといった当時の最先端バンドでさえ、軽薄さとは無縁ではいられない。それが悪いのではない。むしろ楽しんだ方だ。けれど、それを今真正直に再現しても、色が無秩序にごてごてに氾濫するネオンの中では下品にしか映らない。それに気づかないままに得意気になっているから、映画自体がバカに見えるのだ。

 斯くしてバカは徹底される。とりわけ如実にバカが焼きつけられているのは、主人公カップルの造形だ。ライヴハウスで働くロックシンガー志望の男と女。彼らが恋に落ちるのは目に見えているし、擦れ違いで関係がダメになるのも火を見るよりも明らか。このだだでさえ陳腐な関係が、役者と衣装と楽曲のトリプルバカにより瀕死状態に追い込まれる。

 ディエゴ・ボネータとジュリアン・ハフは歌唱力こそあれ、当時のギラギラテカテカした空気に完全に呑まれている。その上、のっぺり顔のボネータはデフォルトがタンクトップ、クリスティーナ・アギレラのバッタモンみたいなハフはストリッパーの露出過多ドレスに身を包んで、スターを気取る。見せ場であるはずのパフォーマンスは、律儀にも今見ると恥ずかしい80年代特有の陽気さを前面に押し出したもので、どうしてもカッコイイとは言い難い。結果、堂々バカが浮かび上がる。

 このどこから見てもバカな話の脇を、豪華スターが固めているのがますますバカだ。トム・クルーズのなりきりロッカーぶりは、ほとんど作品を乗っ取るほどのインパクトだけれど、クールを狙いながらバカに堕ちていく中では、次第に哀れに浮いてくる。アレック・ボールドウィンとラッセル・ブランドの掛け合いはユーモラスでも、ふたりの関係の掘り下げは悪乗りとしか言いようがない。キャサリン・ゼタ=ジョーンズは久しぶりのミュージカルだというのに、窮屈な衣装に身を包んで退屈な振り付けで踊らされる。ポール・ジャマッティはハゲを強調して撮られ、ブライアン・クランストンは出てくる意味が分からない。得をしたのはメアリー・J・ブライジのみ。うん、さすがに上手い。役者たちのパフォーマンスなんかとは、洗練具合が違う。

 アダム・シャンクマンは「ヘアスプレー」では60年代ボルチモアを生き生きと描写した人だ。それがこの体たらく。冒頭ヒロインがバスでロサンゼルスに向かう場面では思わず、その再現を期待したけれど、アッという間にそれは吹き飛ぶ。80年代ロサンゼルスの毒気にやられたのだろう。お行儀良さはあの時代、力にならないのだ。





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