フィッシュ・タンク

フィッシュ・タンク “Fish Tank”

監督:アンドレア・アーノルド

出演:ケイティ・ジャーヴィス、マイケル・ファスベンダー、
   カーストン・ウェアリング、ハリー・トレッダウェイ、
   レベッカ・グリフィス、シドニー・メアリー・ナッシュ

評価:★★★




 ミアという名の15歳の少女は、他人の土地に鎖で繋がれている馬を何度も解き放とうとする。白いその馬は薄汚れている。元気もないようだ。目には淋しさが付きまとう。ミアが馬の中に自分を見ているのは明白で、だから馬が辿る運命には胸が痛む。

 そう、『フィッシュ・タンク』は生易しい青春ドラマなんかではない。15歳という多感な年齢に入った少女をじっくり観察しながら、その過酷な現実を炙り出していく。そこには甘さがない。温かさがない。いや、それを手に入れたと思ったら、すぐさまこっぴどく裏切られる。それが現実だと、頑なに真っ直ぐな姿勢を崩さない。

 ミアがずっとスウェットパンツで通すのにはたまげる。公営住宅で男にだらしがない母と口の悪い妹と暮らすミアは、踊ることで命を感じている。動きやすい格好が第一で、だからスウェットがベストなのだ。オシャレのオの字もない。スウェットがグレイで良かった。黄土色ならラクダの股引に見えるところだ。

 ラクダ一歩手前のミアの身には生きる不満がぱんぱんに詰まっている。もがけばもがくほど雁字搦めになるやり場のない怒りも抱えている。若い命はそれをコントロールできない。ナイフが目の前にあれば、「切る」以外の用途は見つけられないだろう。磨かれるのがこれからの彼女は、原石でしかない。

 ミアの平凡な日常を揺さぶるのは、母親の新しい恋人だ。やたらセクシーなこの男、ミアが関心を寄せるのも当然と言えば当然。そこには大人の男への興味と恋心、そして母子家庭で育ったがゆえの父への憧憬のようなものが見える。ミアには彼がどん詰まりの人生に光をもたらすキーなのだ。スウェットを履いたつっぱり少女の大人びた態度が、男の近くに寄ることで崩れ去るのが面白い。子どもの表情になる。ケイティ・ジャーヴィスの小さな身体とシャープな顔立ちが生きている。

 この男との顛末は予想よりもヘヴィーな方向に向かう。自分が定まらないがゆえの愚行。そして男が見せる大人の狡さ。ミアは最後の最後に絶望に突き落とされる。マイケル・ファスベンダー特有の狂気がちらつき、画面に一筋縄では行かないしこりが転がり始める。

 その後の展開はほろ苦いと言うより、苦しくて、痛くて、ほとんど死にたい気分に繋がっていく。それでも少女は歩みをやめなかった。逃げのような、前進のような、不思議な感触が残る。夢なんか、救いにならない。向かう先には、何も見えない。しかし、これもまた現実というものなのだろう。避けては通れないものを少女は、強引に突っ切ったように見える。





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