我らの生活

我らの生活 “La nostra vita”

監督:ダニエレ・ルケッティ

出演:エリオ・ジェルマーノ、イザベラ・ラゴネーゼ、
   ラウル・ボヴァ、ステファニア・モントーシ、
   ルカ・ジンガレッティ、ジョルジョ・コランジェリ

評価:★★




 冒頭の何てことのない家族の風景が目に優しい。父は働き盛り。母は第三子を妊娠中。長男と次男は元気一杯、すくすくと育っている。彼らが醸し出す空気の親密さよ。ベッドで川の字になって寝たり、ショッピングで欲しいものをねだったり、車の中で他愛のない会話をしたり…。淡い色合いの画面の中、何かとても尊いものを目撃したような気分になる。

 この幸せなイタリアの風景が消え去ってしまう。妻が出産時に命を落とすのだ。そこから立ち直るのは容易ではないだろう。何物にも代え難い幸福に包まれていたのだから、なおさらだ。葬儀の際、夫がある歌を絶唱する場面が強烈な印象を残す。哀しみの水が洪水となってスクリーンの外に溢れ出てくる。『我らの生活』は彼らの行く末をじっと見守る。

 この手の話の例に漏れず、がむしゃらに絶望から這い上がろうとしてもなかなか上手く行かず、しかしそこに仄かな希望の光が射すという展開が用意される。容赦なくシビアというわけでも、とってつけたように甘いわけでもない、淡々とした日々。個性を出すために導入されるのは不法移民問題だ。

 イタリアではどうやら不法移民による違法な労働が大きな問題になっているようだ。建設業を営む夫は、彼らを使って再起を図ろうとする。現場では衝突ばかり。仕事の完成度は高くない。作業は日に日に遅れていく。金の工面にも一苦労だ。妻を亡くした喪失感と無理矢理な再生を交互に描くことで、人生の機微を揺らそうとするも、バランスはさほど上手く取れていない。後半に行くに従い、移民問題メインの話にシフトしてしまう。作り手の主張が物語の足元をぐらつかせる(ただし、ある事故にまつわる隠蔽は上手く話に盛り込まれている)。それならば独り身の兄や世話焼きの姉の存在をもっと掘り下げても良かったのではないか。姉からはハイヒールについて「親戚と同じよ。窮屈だけど役に立つ」なんてニンマリしてしまうセリフも飛び出す。

 その上、語りのペースも気持ちが良くない。おそらく妻の死を考えまいとするがあまりのがむしゃらな非日常への没頭、或いは目まぐるしく回る日々の雑事を意識したがゆえに、話を語ることを急いでいる。カメラも人物にやたら近く寄る。しかし、そうすることで、常に話が前のめりになっている。躓いて、でも踏ん張って、また躓いて、でも踏ん張っての繰り返し。もう一歩引いたところから落ち着いた眺めを選ぶことで見えてくるものも多いのではないか。

 夫を演じるエリオ・ジェルマーノは小さな背中が印象的だ。頑張れば頑張るほどに背中が小さくなる。ひょろひょろの身体が、無理をしていることを容易に伝える。回りの人間が放っておけなくなるのも当然だ。ジェルマーノが子どもたちと戯れるラストショットが良い。戯れる場所は、妻の死後子どもたちでさえ入れることを拒否してきた場所だ。ジェルマーノの笑みにホッとする。この笑みをゆっくりと眺められる場面がもっと欲しかった。





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