ザ・エッジ・オブ・ウォー 戦火の愛

ザ・エッジ・オブ・ウォー 戦火の愛 “The Edge of Love”

監督:ジョン・メイブリー

出演:キーラ・ナイトレイ、シエナ・ミラー、
   キリアン・マーフィ、マシュー・リース

評価:★★




 1940年代のロンドン、ドイツ軍の空襲に見舞われている中で4人の男女が出会う。詩人ディラン・トマスが出てくるものの、彼は主人公ではない。中心に置かれるのは彼の幼馴染であるヴェラという女性だ。ヴェラとディラン、その妻キャトリン、ヴェラに思いを寄せる英国軍人のウィリアムの関係が描かれる。ディラン・トマスの詩人ゆえの立ち振る舞いは見当たらない。ただし、その言葉は詩を詠うかのように耳に入ってくる。

 『ザ・エッジ・オブ・ウォー 戦火の愛』は時代を映し出す撮影が素晴らしい。序盤はライティングが凝っている。ヴェラはクラブ歌手という設定なので、その華やかさを引き出す細心の注意が払われる。くちなしの花を髪飾りにしたオープニングの歌唱場面は、ちょいとハワイっぽくて苦笑してしまうものの、ヴェラの強い眼差しの力も手伝って強く心に残る。影を意図的に作り出したり、褪せた写真の色合いを狙ったり、遊びも多い。後半は舞台がウェールズに移り、今度は自然光が活かされた撮影が多くなる。寂しげな風景の匂いを静かに封じ込めている。断わるまでもなく、衣装や美術も念入りに再現される。とりわけヴェラ役のキーラ・ナイトレイが美しい。

 メロドラマ色の強い物語はウィリアムが一時退場するまでの前半がまずまずの面白さ。男女4人の微妙な距離感がギリギリのバランス感覚で描かれていく。この「ギリギリ」をウィリアムが無視してヴェラに迫るのが可笑しい。演じるキリアン・マーフィがいつもの内向的な印象とは異なり、ぐいぐいナイトレイに向かっていく。

 ウィリアムが戦地に趣いてからは演出のマイナス面が目立ってくる。四角関係のポイントは、ヴェラとキャトリンの間に流れる同性愛に通じる絆にある。片方は妻、もう片方は友人としてのポジションで揺れ動く。ふたりは同じ男に惹かれるという敵対してもおかしくない間柄でありながら、関係をじっくり深めていく。この部分がもうひとつ盛り上がらない。ヴェラとキャトリンの間のケミストリーが不発に終わっているため、サスペンスが盛り上がらず、煮え切らないだけの関係に見えてくる。ディランにしても妻がありながらヴェラを「魂の伴侶」と呼ぶ小狡さが活かされていない。ディランの自分に都合良い女の愛し方は、それだけで映画になるような面白い題材だろう。

 話は迷走を始める。四角関係そのものに焦点が当てられていた物語。それがいつしか、戦争によって心を病んでしまった男の物語になり、貧困が人間関係を破壊する物語になり、有罪無罪の行方を負う裁判の物語になり…とあちこちポイントを飛ばしていく。おそらく作り手も、何の物語か分かっていない。

 ナイトレイとシエナ・ミラーを眺めていると、女優とタレントの差というものを強く感じる。ここで言うタレントとは、誰かに見られることそのものを目的にしているような者のことだ。セレブという安っぽい言い回しに置き換えることも可能。注目を浴びることが第一で、誰かを表現することは二の次。ミラーの佇まいからはそういう匂いしか漂ってこない。ニュアンス豊かに表情を変えるナイトレイの方が面白いことは言うまでもない。





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