デンジャラス・ラン

デンジャラス・ラン “Safe House”

監督:ダニエル・エスピノーサ

出演:デンゼル・ワシントン、ライアン・レイノルズ、ヴェラ・ファーミガ、
   ブレンダン・グリーソン、サム・シェパード、ルーベン・ブラデス、
   ノラ・アルネゼデール、ロバート・パトリック

評価:★★★




 南アフリカ、ケープタウンでライアン・レイノルズがデンゼル・ワシントンを保護しながら逃げる。レイノルズは事務系CIAエージェント、ワシントンは各国から指名手配される元CIAの凶悪犯だ。善人が悪人と一緒に逃げ惑うという話は、さほど珍しくない。当然のように連帯感が生まれる。味方の中に裏切り者が潜んでいるというのも、ありふれた設定だ。つまり『デンジャラス・ラン』には新しさを感じさせる要素は見当たらない。

 …それにも関わらず身体をぐいぐい引き寄せられるのは、第一に、逃げる構図が重層的に組み立てられているからだ。ふたりはCIAに追い掛けられる。正体不明の組織にも命を狙われる。そしてレイノルズとワシントンは任務と倫理観、信念と諦観の狭間に容赦なく突き落とされ、場面毎に追い掛ける側追い掛けられる側、命を狙う側狙われる側、相手を守る側守られる側へと振り回される。互いが協力して切り抜ける場面ももちろん出てくる。安定感のない立ち位置がサスペンスを刺激する。

 しかもこの逃避行が、カットの大変素早い切り返しで描かれていく。セリフは重なり合う。ほとんど撮影映像をズタズタにしているだけじゃないかというラインギリギリのところまで持ち込み、大胆な編集術と音楽の力により豪快に畳み掛けていく。しかし、MTVには決してならない。材料として用意された映像のざらざらとした手触りは、ドキュメンタリー的な迫力を生み出す。ワシントンと何度も組んでいるトニー・スコットを思い出す。必然的に描写は過激になる。そこには痛みがある。不快さがある。

 南アフリカが舞台になっているのも有効だ。「第9地区」(09年)の例を挙げるまでもなく、ケープタウンは街並自体がドラマティックだ。ビルの立ち並ぶ繁華街がある。アフリカ系専用の居住区が見える。かと思えば、自然を残した大地が見える。山や海が視界に入る。善人と悪人が血みどろになりながら、そこを突破していく。彼らは南アフリカの風景が生んだ何かの塊のようだ。善と悪の衝突に詩情が漂う。

 ワシントンの起用は賛否が割れるところかもしれない。どれだけ冷酷な行為に走っても、どこかで「良いヤツかもしれない」と思わせるワシントンの個性が、物語のスピードを上げていく際の邪魔になる。徹底的な悪を魅せた方が、人間味と呼ばれるものを完全排除した方が良かったのではないか。どれだけ話が進んでも、レイノルズの佇まいから経験不足のニュアンスが消えないこともあって、時折ふたりのパワーバランスがおかしな方向に崩れる。

 銃弾の数がやたら多いのは気になる。南アフリカの乾いた空気の中に鳴り響く銃声は一発一発に重みがあるものの、街中でも自然の中でもお構いなし、これだけ銃弾が消費されるとさすがに生理的な不快感に直結していくものだ。カーチェイスや肉弾戦の方が断然興奮する。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ