あの日 あの時 愛の記憶

あの日 あの時 愛の記憶 “Die verlorene Zeit”

監督:アンナ・ジャスティス

出演:アリス・ドワイヤー、マテウス・ダミエッキ、ダグマー・マンツェル、
   レヒ・マツキェヴィッチュ、スザンヌ・ロタール、フロリアン・ルーカス、
   デヴィッド・ラッシュ、アドリアン・トポル、ヨアンナ・クーリグ、
   シャンテル・ヴァンサンテン、アンナ・アントノヴィッチ

評価:★★




 ユダヤ人収容所で男女が愛し合う隙が本当にあるのか…という疑問はさておき、確かに『あの日 あの時 愛の記憶』のカップルの物語にはメロドラマ的要素が満載だ。荒れ狂う1944年ポーランド。男は政治犯。女はドイツから送られてきたユダヤ人。出会いはアウシュビッツ強制収容所。男は秘密任務の真っ只中。女は妊娠を隠している。看守の目を潜り抜けての逢引。命懸けの脱走。決死の逃避行。男の故郷での日陰の暮らし。母の反対。政治的混乱の最中の別離。…どうだ、マイッタか!

 ここまで盛り沢山に盛り上げるならば、正統派のメロドラマとして見せる方が良かったのではないか。実はこの映画、1976年ニューヨークも舞台になっていて、別れてから30数年後、偶然女が男の生存を確認したことから、再びふたりの人生が揺れる様を描いている。これが鬱陶しい。

 戦時下の愛を取り上げた映画は多い。命の危険に晒される中で繰り広げられるドラマだから、これ以上望めない「恋の障害」が土台に敷かれている強み。奥行きを深める演出が頑丈であるならば、勝算は高い。それを踏まえた上で時間の残酷さを示す。戦争が終わって65年以上が経過している今だから、何年経ってもそれに翻弄される者たちを見つめることも必然と言えるのかもしれない。

 ただ、そうして描かれる男女の姿が、生きていたのか…という感慨以上のものに広がっていかないのは拙い。擦れ違いという典型的なメロドラマアイテムを用意して、それで満足しているとしか思えない。実話ベースであるがゆえ、自由な見せ方ができなかったのか。その分を若いふたりの描写に割くべきだろう。

 ストレートな見せ方になっていたならば、カットされなかっただろうエピソードはあるのだ。ふたりが出会う場面がセリフで済まされる。男が任務先から帰れない事情もばっさり切られる。しかも、これらは明らかに故意にカットしている。着眼点がメロドラマそのものではなく「時間」にあることを意識したがゆえの選択。下手な小細工と呼ぶに相応しい。

 若いふたりが良い。小汚い風貌で登場するアリス・ドワイヤーは、時間の経過と共に、どんどん美しくなっていく。マテウス・ダミエッキは目に誠実な力を込めた佇まいで魅せる。ふたりの掛け合いには緊張感があり、時折瑞々しさも顔を出す。ふたりが収容所を抜け出す作戦はあまりにも稚拙で驚いてしまうものの、それでもふたりの俳優の呼吸が素晴らしくて、結局息を呑む。森や川を隠れながら走り泳ぎ、時には泥棒行為を働き、しかしそれゆえ恋が盛り上がっていくところにメロドラマの醍醐味を見る。

 秘密の妊娠や男の視力。母の政治的立ち位置や兄夫婦の過去。突っ込んだり、掘り下げられるパーツはごろごろしている。やはりストレートな語りを選ぶべきだったと思う。





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