ディア・ブラザー

ディア・ブラザー “Conviction”

監督:トニー・ゴールドウィン

出演:ヒラリー・スワンク、サム・ロックウェル、ミニー・ドライヴァー、
   メリッサ・レオ、ピーター・ギャラガー、ジュリエット・ルイス、
   クレア・デュヴァル、ベイリー・マディソン、トビアス・キャンベル

評価:★★★




 『ディア・ブラザー』のヒロイン、ベティ・アン・ウォルターズは実在の人物だという。彼女には驚かされる。愛する兄が殺人罪で終身刑となり、彼を救うべく、弁護士になっちまうんである。次々出てくる兄に不利な証言。有能な弁護士たちは仕事を受けたがらない。しかし、彼女は諦めない。それなら私が弁護士になってやる!私が兄を助けてやるわよ!なんともまあ、前向きな発想力。あのヒラリー・スワンクが演じているから、奇妙に説得力が出る。バカみたいな話だけど、彼女ならやれるかもしれない。

 前半はウォルターズが弁護士になるまでが描かれる。なんと彼女は高校も出ていなかった。「そこからのスタートか!」と誰もが突っ込むものの、気がつけば彼女はロースクールの学生だ。夫には愛想を尽かされ、ふたりの息子のシングルマザーとして、バーで働きながらの学生生活。知識がない分、家庭を守らなければならない分、苦労は人一倍あっただろう。それでも彼女は遂に弁護士になる。物語が始まって50分で弁護士になる。しかし、現実の時間は10年以上が経っている。おめでとうおめでとう。

 彼女を支えていたものは何なのか。トニー・ゴールドウィン監督は「兄妹の絆」というカードを切る。親に恵まれなかった幼少時代。常に守り守られ生き抜いてきたふたりは絆が強い。回想シーンを何度も挟みながら絆を補強し、だからウォルターズは諦めなかったと語りかける。50分という時間が短く感じられる。案外あっさり弁護士資格が取れたように見える。絆も大切だろう。だけれどそれに寄り掛かるばかりなのは息苦しい。ディズニー映画じゃないのだから。

 弁護士になってからの後半はリーガルサスペンスの趣が強くなる。10年間で証拠は破棄されるという現実。証拠人の証言の虚偽の判明。警察の不正捜査の浮上。現実に即しているとは言え、やや展開がありきたりになる。司法問題や警察の腐敗をストレートに糾弾しながら、ヒロインの信念はいつしか執念に変貌を遂げる。

 事件が起こってから、それが見直されるまでには実に18年という年月がかかっている。ここで気になるのはウォルターズが受ける代償だ。「私の人生は無駄?」というセリフが出てくることからも分かるように、作り手もそれを意識はしている。ただし、掘り下げはしていない。したがって、兄妹の絆の前には代償が代償に見えない。兄を信じ続けるヒーローとして妹が輝くのに、違和感を感じるところがある。

 兄は本当に冤罪なのだろうか。…という謎がサスペンスとして機能していないのは勿体ないところ。絆に重心を置いた展開上、兄が本当に人殺しだったのでは別の映画になってしまう。それゆえ兄の無罪は最初から観客に容易に伝わる。感動ストーリーにこだわる弊害と言える。

 …というように沢山のいちゃもんをつけながら、手の平を返す。結局胸を揺さぶられることを認めなければならない。なぜならここにはスワンクがいるからだ。兄役でサム・ロックウェルがいるからだ。精神的に強い女にスワンクがハマっているのは言うまでもない。ロックウェルによる、困ったところはあっても決して憎み切れない兄貴像もパーフェクト。「花には蜂が来るように、俺には警察が来る」というセリフには笑う。ミニー・ドライヴァーやメリッサ・レオ、ジュリエット・ルイスら脇を固める俳優たちも強力な演技だ。彼らの熱のこもった眼差しが物語を貫く。納得できないところはあっても、結局信じさせられる。演技の力が絵空事を本物にする瞬間が刻まれている。





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