なんだかおかしな物語

なんだかおかしな物語 “It's Kind of a Funny Story”

監督:ライアン・フレック、アンナ・ボーデン

出演:キーア・ギルクリスト、エマ・ロバーツ、ザック・ガリフィアナキス、
   ヴィオラ・デイヴィス、ゾーイ・クラヴィッツ、ローレン・グラハム、
   ジム・ガフィガン、ジェレミー・デイヴィス

評価:★★★




 精神病院が舞台になっているのに、全然深刻にならない。いや、もちろん患者たちの症状は厳しいのだけれど、肝心の主人公の16歳の少年のそれはさほど悲観的とは思えない。それもそのはず、うつ病で自殺願望があるらしい少年はある朝突然、「これは拙い」と自ら進んで病院に赴く。なんか俺、落ち込んでるな。ちょっと入院してみようかな。その程度の気持ち。明るく楽しく入院生活。

 単なる甘ったれじゃないかと言いたくなる気持ちが急速に萎んでいくのは、少年が抱えているもやもやが他人事ではないからだ。家族や友達、好きな女の子。将来や社会。生きる意義はどこにあるのか。おそらく誰もが一度は考えたことのある漠然とした不安感は、振り返ってみれば笑い話になっても、そのときはとても重大な問題だったはずだ。少年は5日間の入院生活を通じて、その不安に向かい合う。『なんだかおかしな物語』は病気を描くのではなく、少年の成長を描く。簡単に言うと、とても正直な青春映画に仕立て上げられている。

 少年の成長に大きな影響を与えるのは、もちろん入院仲間になる。喜劇要素の強い物語の中で彼らを描く際、得てして「奇人変人図鑑」の趣になるものだ。この映画は、それを切り抜ける。彼らの振る舞いの中におかしみを見つけているのは間違いない。ただし、笑い者にはしない。その深刻性を承知しながら、一緒に笑い合う。だからこそ、少年は自分の問題に気づくことができる。

 何のために俺は生きているんだ。答えのない答えから始まったもやもやが、いつしか綺麗に晴れていく。少年は世界を広げていく。物事を見る角度を変える。自分の可能性を信じる。答えに辿りつくまでの道筋は他愛なくても、アニメーションや派手な空想描写を使った遊びのおかげで、微笑ましく受け入れられる。

 逆に真面目なカウンセラー場面は退屈だ。少年が医師に胸の内を曝け出す。正直に、偽りなく、捻りもなく、ストレートに告白する。観る側はそれをそのまま受け止めれば良い。映画表現として面白くない。

 少年が入院中に親しくなる少女としてエマ・ロバーツが登場する。自傷癖があるという設定だけれど、恋の相手以上の存在として浮上しないのは気にかかる。青春映画ではロマンスは不可欠。理解はできても、とってつけたような扱いに首を傾げる。

 少年を演じるキーア・ギルクリストはぷっくりした唇が初々しくて良い。ジャスティン・ロングをもっと透明にした印象だ。これぐらいの透明感があればこそ、入院仲間であるザック・ガリフィアナキスと好対照ができあがる。実は通じる者を持っている同士の掛け合いが、シリアスで、ユーモラス。ガリフィアナキスは画面に入るだけで、独特の空気を創り上げられる不思議な人で、ここでも出てくる度に場をさらう。もの哀しさを感じさせるあたりは、芸域が広い証拠。パッと見、ただのけむくらじゃらのチビッコおじさんだというのに!ギルクリストはロバーツといるときより、ガフィリアナキスといるときの方が断然生き生きしている。





ブログパーツ

blogram投票ボタン

スポンサーサイト



テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

プロフィール

Author:Yoshi
Planet Board(掲示板)

旧FILM PLANET

OSCAR PLANET




since April 4, 2000

バナー
FILM PLANET バナー

人気ページ<月別>
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

月別アーカイブ
最新トラックバック
QRコード
QRコード
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

Friends
福☆こもろ